• コラム

2015年2月24日 | 中国

中国サッカー バブル化による「光と影」

近年の中国サッカークラブといえば、豊富な資金力を武器に強力な外国人選手を買い漁り、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも大きな脅威になっている。今オフに限っても、中超(トップリーグ)4連覇中の王者の広州恒大が2014年ブラジル全国選手権MVPのブラジル人FWグラルをクルゼイロから、UEFAヨーロッパリーグ・グループステージで8得点をあげて得点ランク首位に立っていたブラジル人FWアランをザルツブルクから、それぞれ獲得している。(ザルツブルクは同選手の後釜候補として日本代表MF南野拓実を補強)

また、カップ戦王者の山東魯能は欧州でも活躍したブラジル人FWジエゴ・タルデリを獲得。グラルとタルデリはブラジル代表としても活躍しており、現役セレソンFW2人が中国リーグに参戦することになる。他にもアジアカップを制したオーストラリアのエースで、日本の仇敵であるティム・ケーヒルが上海申花に加入。中国リーグの大物補強は選手だけに留まらない。ACLでガンバ大阪と対戦する広州富力は、新監督としてスペイン1部ヘタフェからコスミン・コントラ氏を引き抜いた。コントラ氏の年俸はヘタフェ時代の5倍以上に上ると報じられている。

このように「バブル」や「金」のイメージを色濃くする中国リーグだが、上記のビッグクラブが中国サッカーの「光」だとすると、その裏には「影」があることも忘れてはならない。中国国内には、資金難によりリーグ参加危機に陥ったり、ホームタウンを移転したり、挙句の果てには解散やリーグ参加を放棄したりするクラブもあるこが、これはあまり知られていない事実だ。


・例①リーグ参加危機 重慶力帆
2004年アジアカップで日本代表が4試合戦った四川省重慶のクラブ。元々はカップ戦優勝歴もある名門クラブで、中甲(2部相当)で優勝し5年ぶりにトップリーグに復帰。しかし、年末からスポンサーである力帆グループが中超残留のための予算(日本円で推定約30億円)の拠出が不可能としてリーグ不参加を表明。 しばらく譲渡先を探し見つからなければ解散と言われていたが、結局、力帆グループが引き続きスポンサーを務めることになった。

・例②ホームタウン移転 太原中優嘉怡→呼和浩特中優*中甲(2部相当)
2014年10月に中乙(3部相当)で2位となり、中甲昇格が決定。山西省初のプロサッカークラブとして話題になったのも束の間、まず太原のホームスタジアムの規格問題が持ち上がり、更にはスポンサーの都合によりあっさり内モンゴル自治区の省都であるフフホト市へ移転。喜んでいた山西省のファンはどう思っているだろうか。

・例③チーム解散 成都天誠 *中甲(2部相当)
昨年、中甲残留を決めるも、天誠グループがスポンサーを降りてチームが解散。1996年に成都五牛として創設されて以降6回の改称を経てきたが、18年も成都に留まり続けたのは評価に値する。
*興味ある方は今季ACL初出場する広州富力の変遷も調べてみて欲しい。

・例④参加放棄(?)陝西五洲 *中甲(2部相当)
元々2007年に創設された広東日之泉を陝西省の企業グループが買収し、南部広東省のクラブが西部に移動する形で陝西五洲が誕生したのが2014年12月14日。陝西省の省都西安はサッカー熱がとても高く、プロサッカークラブ誕生に歓喜していた。 しかし、期日までに必要書類を提出せず、2015年の中甲リーグ不参加が決まった。監督や選手への給与支払いに関する書類に問題があったとの報道だが、陝西五洲側からの公式発表はない。この件は未だに真相が分からないままだが 気の毒なのは、待ちわびた陝西省のサポーターや急に所属先を失った選手や監督、コーチ陣だ。

・例⑤チーム名改称 河北中基→河北華夏幸福 北京八喜→北京控股 *いずれも中甲
主にスポンサーの変更が原因だが、正直頻繁過ぎてキャッチアップできない。むしろ10年前からチーム名を変更してないチームの方が稀だ。因みに河北華夏幸福の顔ぶれもかなり豪華で、監督には、かつてバルセロナやレアルマドリーを指揮したセルビア人監督のラドミル・アンティッチ氏を招聘。2006年のワールドカップでセルビア代表として出場したMFミリヤシュや、元中国代表DF杜威(DuWei)らを獲得。しかし、この勢いがいつまで続くかは疑問だ。


これらは全て今オフ(昨年末~今年)に起きた出来事である。日本ではありえないことが毎年たくさん起きている。1998年の横浜フリューゲルスの事例がほぼ毎年J1かJ2で起きていると言えば、日本のサッカーファンにも理解してもらえるだろう。特に近年のバブル化で移籍金やチーム予算水準が高騰したことも一因であろう。

中国のクラブは良くも悪くも「スポンサーのオモチャ」。広州恒大のように巨額の資金を投入できるクラブがある一方で、儲けが出ないとあっさりスポンサーが撤退を決めるなど、解散までの道のりは実にあっけないものがある。かつて中国最強と言われた大連実徳も、スポンサーの資金力低下で一転して残留争いに陥り、2012年に残留したものの、結局、同じホームタウンの大連阿爾濱に吸収されて実質消滅してしまった。その大連阿爾濱も以前は、マリ代表MFセイドゥ・ケイタや元ブラジル代表ロッケンバックらを擁し上位に進出していたが、2014年に資金難に陥り給与未払いが発覚すると、主力流出や外国人選手のチーム離脱が相次ぎ2部に降格してしまった。

投資する側もビジネスであり、短期的勝利しか興味はない。育成や長期的戦略を見据える余裕はないのだ。中超でスタメンのFWはほぼ全員外国人選手であり、CBも少なくとも一人は外国人選手が占めている。その弊害として、2015年アジアカップの中国代表はベスト8に進出したとはいえ、レギュラーのCBは所属クラブでサイドバックを務める2人であった。初戦では、本来左MFの選手が1トップで先発、選手登録された23人のうち、純粋なストライカーは2人しかいなかった。しかし、FWの郜林(GaoLin)は、強力な外国人助っ人に追いやられて、所属クラブの広州恒大ではウィングを務めており、FW楊旭(YangXu)も山東魯能では殆ど出番がなく、レンタル先の長春でやっと出番を得た状態。昨年、中超リーグの得点のうち約3分の2が外国人選手の得点で、得点ランクトップ15に中国人は1人だけだった。

確かに豊富な資金が中国サッカーに多くのものをもたらしているのも事実だが こうした「影」の弊害も中国サッカー協会やメディアは注目すべきだ。広州恒大だろうと、山東だろうと、10年後にクラブが存続しているか。その時どれだけ優秀な中国人プレイヤーを輩出できるか。そのときに最終的評価が下せるのではなかろうか。

(アジアサッカー研究所/ZZ)