• コラム

2015年6月1日 | インド

印・パ サッカーを通じた友好関係づくりはいかに?

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パキスタンサッカー連盟は8日、“全インドサッカー連盟のプラフル・パテル会長は、インドとパキスタンの定期的なフレンドリーマッチの再開、そして、インディアン・スーパーリーグ(ISL)のパキスタン人選手の参加を約束した。”との内容のプレスリリースを行った。


ご存知の通り、インドとパキスタンの関係は緊張状態が続いておりであり、現在でも一部の国境線近くでは紛争地域となっており、立ち入りが制限されているほど。インドとパキスタン対立の歴史は深く、未だ解決に至らない根深い問題となっている。ちなみに、インド入国の際には、パキスタンから入国履歴を厳しく問われることからその関係の悪さを身近に感じることがある。


このような状況下、インドとパキスタンがサッカーを通じて友好関係の構築に繋げようという、大変明るいニュースかと思っていた矢先。全インドサッカー連盟のパテル会長が、このプレスリリースに関して発表された内容を否定するという事態が発生した。


なぜこのようなことが起こってしまったのかというと、

このプレスリリースが行われる前日の7日に、バーレーンの首都マナーマで行われたアジアサッカー連盟南地域の副会長の選任の会合が開かれた際、パキスタンサッカー連盟のクドーム・サイェド・ファイサル・サレー・ハヤト会長とインドのパテル会長が候補者として対立していた中で、投票の直前ハヤト会長が辞退。その結果、インドのパテル会長が選任された。

ハヤト会長の辞退の裏には、事前にパテル会長と会合が行なわれ、先に述べたプレスリリースの内容が非公式の中で合意が行なわれており、この二つの取引条件でハヤト会長が辞退したのだとパキスタンサッカー連盟側は主張している。


この件を受けて、ISLのチーム関係者に話を聞いてみたところ、「現時点でパキスタン人選手をチームに加入させなければならない等の知らせは受けていない。また、ISLではこれまでにも外国人選手に関して自由に選択出来たので、パキスタン人選手の中に特出した選手がいればスカウトしているはずだが、外国人マーケットは、より良い選択肢であふれている。」と語った。


両会長の会合で、実際にどのような話があったかは推測の域を出ないが、大人の事情のためパテル会長が言わないだけなのか、新たなポストへの口実だったのか、真実は闇の中である。これを知るには今後のISLにパキスタン人選手が参加するのか動向を見守る必要がありそうだ。


前述のように、インドとパキスタンは、カシミールの領土問題やヒンドゥー・イスラムの宗教対立など紛争が絶えない関係であるため、今回のような小さな火種がどんなことで拡大するか誰も予測できない。歴史上、エルサルバドル対ホンジュラスでは、サッカーを発端にサッカー戦争が勃発している。

その他にも、アジアでは、北朝鮮、チベット、東ティモールなど紛争地域が数多くあり、またロシアワールドカップ予選では、中東を含めた多くの紛争地域の国々も出場する。当然ながら紛争地域では試合が行なわれず中立国での開催となるが、イスラム国の台頭など、穏やかではないアジア情勢には、必要以上の配慮が必要になってくると言える。


各国のサッカー界を牽引するトップの面々はその辺の事情も考慮して上手く立ち振る舞ってもらえないものか、とは言え、これまでの関係性またその後のメディアの落ち着きを見ると、こういった事例は過去によくあったことなのかもしれない。ただの一過性の小競り合いという印象である。これがもしインドの国民的なスポーツのクリケットであればまた、話は別にちがいない。まだまだサッカーへの国民の熱が高くないということだ。何にせよ、サッカーは、子供を大人にし、大人を紳士にするスポーツだということを忘れないでほしい。


さて、一方でI-League[i]も佳境に入り優勝の可能性は3チームに絞られてきている。特に上位2チームが勝ち点で並んでおり、日本人選手の遊佐選手[ii]がプレーしているモハンバガン、そして前回王者のバンガロールFCが熾烈な首位争いを繰り広げている。遊佐選手は初めて優勝争いに絡んでいる。31日の最終節は、この2チームの直接対決となっており、この大一番で優勝が決まるというドラマチックな展開に筆者は興奮しているが、インド人はそこまで盛り上がっていないように見えるのが残念だ。


参考:The Indian EXPRESS http://indianexpress.com/

[i] 2007年に発足したインドのプロサッカーリーグである。2014年に開始したインディアンスーパーリーグ(ISL)とは別リーグである。http://i-league.org

[ii] 遊佐 克美(ゆさ かつみ) 1988年8月2日生まれ。福島県出身元Jリーガー。ポジションはMF。2011年よりI-Leagueでプレーを始め、2013年より現在プレーしているモハンバガンでプレーしている。

個人ブログ:https://www.penalty.co.jp/blog/katsumi_yusa/

(アジアサッカー研究所/伊藤)