• コラム

2015年7月13日 | アジア

Jリーグ、幸せの国・ブータンへ(3)パロ編


ブータンの子どもたちにJリーグ各クラブのファン、サポーターの皆さんから寄贈されたユニフォームを届ける活動が実施されました。この活動はこれまで、カンボジア・東ティモール・ミャンマーで実施されていて、ブータンで4カ国目となります。

今回から日本政府が推進する「スポーツ・フォー・トゥモロー認定プログラム」として実施されたこの活動に、ボランティアとしてアジアサッカー研究所が同行し、Jリーグと一緒に、ブータンの子どもたちへユニフォームを届けてきました!

「スポーツ・フォー・トゥモロー認定プログラム」について
http://www.jleague.jp/release/post-36230/(Jリーグプレスリリース)
http://www.soccer-king.jp/news/japan/20150703/327490.html(Soccer King)




ブータンの子どもたち、特に男の子の遊びのナンバーワンはストリートサッカーだ。首都ティンプーでJリーグがクリニックを行ったその日の午後から、さっそく街中でセレッソ大阪や名古屋グランパスのユニフォームを着てボールを追っている子どもたちを見ることができた。

−「そのユニフォーム、かっこいいな!」
−「僕、さっきのサッカーに参加したんだよ!一緒にやろうよ!」
そんな会話を楽しむことができた。

さっそくユニフォームを着てサッカーをしていました!

さっそくユニフォームを着てサッカーをしていました!


商店では、マンチェスターU、リバプール、アーセナル、バルセロナなどの子ども用ユニフォームセット(のコピー品)が廉価で売られていて、ブータン随一の都会であるティンプーの子どもたちは、そういった服を着てサッカーをする子も多い。

ただそれは他のリーグやチームを知らなかったり、コピー品が流通していなかったりするだけの話で、Jリーグの「本物」を手にした瞬間、それらメガクラブのユニフォームからJクラブのものに取って替わるのを見ると、この活動はなかなか意義深いものだ、と感じた。

「一緒にやろうよ!」誘われたら断るわけにはいかない!

「一緒にやろうよ!」誘われたら断るわけにはいかない!


7月4日(土)、ティンプーから第4番目の都市であるパロへ移動。パロ郊外にある、ブータン軍施設内にあるグランドにピッチを作ってクリニックを実施。ここにも200名を超える子どもたちが集まってくれた。パロの子どもたちは首都の子どもたちと違い、サッカーのユニフォームもシューズも持っておらず、みな思い思いの格好でJリーグの到着を待っていた。

パロの子どもたちと「クズザンポー!(こんにちは!)」

パロの子どもたちと「クズザンポー!(こんにちは!)」


女の子も多数参加してボールを追い、みんなと一緒に遊べることがとても楽しい、といった様子だった。余談だが、セレッソ大阪のピンク色のユニフォームは、やはり女の子に人気だった。

女の子たちも一緒にボールを追って遊びました

女の子たちも一緒にボールを追って遊びました


Jリーグスタッフも混じってボールを蹴り交流を深めたあとは、恒例の歌の時間。ティンプーの子どもたちは流暢な英語(ブータンでは英語を使っての授業がある)で洋楽を歌ったが、パロではゾンカ語のブータンの歌が中心だった。Jリーグ側もお返しに日本語で「上を向いて歩こう」を歌った。

振り付きで歌のプレゼント!ガンバ、アルディージャ、アルディージャの3人組


日本でもそうだが、ブータンでは子どもから代表チームまで、練習の終わりにかけ声をかけて終わる習慣らしい。パターンは「1-2-3-football!」や「1-2-3-4-5, football!」など幾つかある。「最後のfootballをJ-leagueに変えてやってみよう!」というとノリノリでやってくれた。Jリーグという単語を覚えてくれただろうか?

なぜか〆を仕切るはめに。One, Two, Three,Jリーグ!


ヒマラヤの懐にあるこの国も、他のアジア諸国と同様、とにかく日本びいきであった。自分たちと日本人は精神的に似ていることを知っていて、お互いにリスペクトできる存在だと思っている。「(震災の)3月11日の時は、翌日に国全体が緊急の休みになりました。国王はじめ政府の要人もお寺に入って、日本のために祈りました。」というほどだ。

基本的に親日であるアジアの国々と、グラスルーツレベルで繋がりの機会を得られるこの“ユニフォームお届け”活動は、未来の日本とアジア各国のサッカー界の関係、もしかしたらサッカーの枠を超えて大きな役割を果たすかもしれない。

協力いただいたブータン軍にもJリーグのペナントをお渡ししてます

協力いただいたブータン軍にもJリーグのペナントをお渡ししてます


そのためには、継続が大事だ。Jリーグ国際部の山下氏は語る。「もっと多くの方に、一度で良いからこの活動に一緒に来て欲しいんですよね。この活動の意義を感じられると思います。それに、現在はボランティアに頼らざるを得ない状況ですが、もっと大きなうねりにしていきたいのです。」

アジアサッカー研究所としても、実際にこの活動に同行して分かったことが幾つかあった。

  1. ファン、サポーターが自主的にユニフォームを集め、リーグ事務局が自ら出向いて手渡しにいくというのは、世界を見渡してもおそらくJリーグオリジナルの貴重な活動。
  2. 子どもたちとサッカーを通じて直接コミュニケーションを取ることで、ユニフォームに“思い出”という価値が加わる。世界戦略に長けたヨーロッパのメガクラブに対抗できる、人間味溢れた手法。
  3. 相手国協会やリーグ関係者と一緒にイベント行い、コミュニケーションが取れるので、日本サッカー全体としてとらえた時に、両国協会の関係深化、JFAアジア貢献活動のサポートに一役買うことができる。
  4. なにより、現地のリアルな情報が入手できる。
相手国のサッカー協会と過ごす時間は、貴重だ。

相手国のサッカー協会と過ごす時間は、貴重だ。


トップエンドの仕組みづくりとそこに関わる組織間の調整が仕事であるJリーグではあるが、このようなグラスルーツの場面においてもJリーグ事務局が主体的に動くことで、サッカー界内外の団体を巻き込むことができる。ぜひこの活動が継続され、さらに大きな潮流を生み、アジアとの交流が促進されるのを願ってやまない。

また来るよ!カディンチェラ(ありがとう)、ブータン!


「次は、いつ来ますか?また来てくださいね!」協会スタッフから子どもたちまで、Jリーグの再訪を求めるたくさんの声のなか、ブータンを後にした。

女子ワールドカップの決勝もブータンで見ることができた

>> ティンプー編(前編)を読む

>> 冷静と情熱のあいだ編(中編)を読む

(アジアサッカー研究所/長谷川)