• コラム

2015年7月21日 | インドネシア

アジア戦略にもダメージ。FIFAの制裁続くインドネシア (1/2)


「PSSI Dibekukan!」(インドネシアサッカー協会、中断!)

この衝撃的なニュースがジャカルタから飛び込んできたのは、4月18日のこと。

内容は、インドネシア政府の青少年スポーツ省によって、インドネシアサッカー協会(以下PSSI)の活動が凍結されたというものだった。PSSIによる全ての行動が政府のポリシーに反するものであり、同省が再三の改善命令を出していたにも関わらず所定の手続きを取らなかったため、と報じられていた。

アジアサッカー研究所はインドネシアへ飛び、関係者からのヒアリングをもとに動向を探った。


 引き金は分裂したリーグとチーム

東南アジアでは、サッカーの試合を利用して政治活動が行われることは日常だ。熱狂的な観客がたくさん集まるその試合は、投票誘導の場であるばかりか、政治資金の集金システム、汚職、八百長の温床となっていることさえある。

国際サッカー連盟(以下FIFA)を頂点とするサッカーの世界では、1国1協会1リーグというのが原則ルールだが、インドネシアでは2011年以降、トップリーグが2つの状態になったことがあり、経営方針や内部政治が原因で分裂したクラブが、それぞれのリーグにチームを参加させたりといった状況も起こっていた。

インドネシアサッカー界の自浄作用として、このような悪しき習慣を内部から正常化(清浄化)しようとする動きはあり、2014年からPSSI主導で「インドネシアスーパーリーグ(以下ISL)」として1つのリーグに収束統合させていくまっただ中にあったが、政治力の大きい2つの分裂チームの存在が今回の引き金となってしまった。

青年スポーツ省の外郭団体にあたるプロスポーツ委員会が指摘したのは、アレマとプルセバヤという2つの分裂チーム。PSSIを通して統合などの改善命令を出してきたが、チーム側はそれを受け入れなかった。加えてPSSIがISLへの参加を認めたため、これに政府側が反発した。

イマム青年スポーツ相は、4月12日以降のリーグ戦の運営権利を剥奪し、PSSI自体を凍結する大臣令を出した。(後日、裁判所により大臣令は差し止め)


 政府による干渉

この週末、インドネシアサッカー協会では会長選挙が実施されていた。新会長にはスラバヤ出身のラ・ニャラ氏(2014年度PSSIの副会長であった人物)が就任し、2015年4月から4年間の任期(2019年まで)となっていた。青年スポーツ省はこの投票結果も認めず、PSSIに代わる大会実行委員会を組織し、またA代表やU-23代表チームなどはインドネシア・オリンピック委員会が指揮監督を執ることとした。

これに対してラ・ニャラ新会長は、PSSIの上部団体であるFIFAに凍結は認められていないことを理由に、4月25日からのリーグ再開を宣言し、徹底的に政府と戦う意思を示した(結局、リーグは再開されなかった)。またPSSIは各クラブに対し、同省が組織した大会実行委員会が主催する、どんな大会にも出場しないように要請した。


○ FIFAによる警告〜資格停止処分へ

これに反応したのが、ポリシーとしてサッカーへの政治介入を良としないFIFAだ。

FIFAはインドネシア政府がPSSIの運営に介入しているとして、5月29日までにこの問題が解決しない場合、インドネシアの国際大会参加の禁止をも辞さないと警告してきた。

実はこの時、『東南アジアのオリンピック』と称されるスポーツの一大イベント、SEA GAMES(東南アジア競技大会)の開幕が迫っていた。サッカー競技は5月29日から予選が始まる。同大会への出場をも停止にしてしまっては、シンガポール建国50周年事業として行われるSEA GAMESの運営に多大な影響を及ぼし、熱狂的サッカーファンを抱えるインドネシア国民からの不満も一気に爆発しかねない。5月29日のデッドラインはそうした配慮があったものとみられる。

こうしてFIFAは5月30日、PSSIに対し、SEA GAMESのU-23代表チームの活動のみを例外とした正式な資格停止処分を下した。これによりインドネシアは、2018 FIFAワールドカップ・アジア2次予選への出場ほか、アンダー世代を含めた全ての国際大会への出場が出来なくなってしまった。


>>アジア戦略にもダメージ。FIFAの制裁続くインドネシア (2/2)につづく


参考文献
・ Bola (Indonesia)
じゃかるた新聞 (Indonesia)
VIETNAM FOOTBALL (Vietnam)

(アジアサッカー研究所/長谷川)