• コラム

2015年7月21日 | インドネシア

アジア戦略にもダメージ。FIFAの制裁続くインドネシア (2/2)

「PSSI Dibekukan!」(インドネシアサッカー協会、中断!)

この衝撃的なニュースがジャカルタから飛び込んできたのは、4月18日のこと。

内容は、インドネシア政府の青少年スポーツ省によって、インドネシアサッカー協会(以下PSSI)の活動が凍結されたというものだった。アジアサッカー研究所はインドネシアへ飛び、関係者からのヒアリングをもとに動向を探った。


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○ 制裁解除への高い障壁


FIFAによる制裁発動の理由は、サッカー協会の会長選挙と、政府のPSSIに対する干渉が発端となったが、単に「努力不足のPSSIへの罰」として受け取るのは適当な見方ではない。インドネシアは、リーグ戦が分裂していたこともあって、数年前からFIFAの警告の対象になっていた。自浄作用が働き、改善の方向に進んでいたことはFIFAも当然把握していたはずだ。


しかし、このタイミングで制裁が起こった。


どうもこの問題のボトルネックは、インドネシアサッカー界だけで解決できるものではなく、それを遥かに超えて、インドネシア政府を巻き込んで複雑に入り組んだ、政治とその人間関係にあるようだ。


前に述べた通り、インドネシアのサッカー界にはそれを政治利用しようという輩が溢れている。彼らは会長選挙という絶好の組織変動機会に、全体への影響力を持ちたいと考えるのが妥当だ。実際に現地で、青年スポーツ省を動かしFIFAが最も嫌う政治介入を断行させたのは、現在のPSSIの体制を覆したい政府側の関係者ではないかという推測を聞いた。サッカー協会と政府、特に青年スポーツ省との関係は良くない。


これに加え、昨年10月に就任したインドネシアのジョコウィ大統領は、清廉潔白なイメージで庶民の支持を集め、インドネシアから政治汚職を排除しようと動いている。政治や汚職に利用されてきたサッカーをこの際に組織ごと再構築し、インドネシア政府内にも巣食う受益者を一掃する機会として活用するというのは容易に考えうる。


これまでさんざん政治利用されてきたインドネシアのサッカーであるが、その浄化、再構築さえも政治利用されるとは皮肉なものだ。


PSSIも黙って制裁を待っていたわけではない。サッカーへの影響を第一に考え、FIFAの制裁が解かれるよう青年スポーツ省やスポーツ大臣を通じて大統領へ懐柔、嘆願を図ったが、受け入れられなかった。ある協会のスタッフは「インドネシア政府よりも昔から、インドネシアサッカー協会は存在するのに…」と嘆いた。


FIFAは、このように深く政治的な要素が絡まった問題であることを知ってのうえで、制裁を発動したのではないか。政府と協会、この複雑なパワーバランスの中で課題解決の糸口を見つけることができたら、インドネシアのサッカーに新たな秩序が生まれる。


○ サッカー界に与える影響


現在、FIFAを頂点とする世界各国のサッカー協会は、公式にPSSIと連絡を取ることが禁じられている。つまり、日本の協会も、リーグも、クラブも、インドネシアとコンタクトを取ることさえ出来ないのだ。この結果、Jリーグのアジア戦略、具体的にはクラブ間交流や、サッカーをマーケティングに活用した日本企業のインドネシア進出については、頭をひねってやらなければならなくなった。


より深い問題は、インドネシア国内の状況だ。

現在国内のリーグ戦については、1部2部すべてのリーグ戦は停止され、それに伴いクラブの活動も停止しているのだという。ある情報によれば、バリ・ユナイテッドを除くすべてのチームが練習を停止、2つのチームが既に解散したとのことだった。(6月末時点の情報)


また協会主導のグラスルーツの活動も止まってしまったことで、指導者の間には選手育成を危惧する声が高い。この状況に、現地のサッカー専門新聞BOLAの親新聞である「KOMPAS」が協賛をして、U-14世代のオープン参加のリーグ戦を立ち上げることが決まったそうだ。


国際試合やリーグ戦が開催されないことで、サッカー関連企業も売り上げの見通しが立たず、別のビジネスを模索している会社さえある。


そして何より、サッカーに熱狂的なインドネシア国民の落胆は大きく、サッカーが好きなファンは、インドネシアサッカー界における解決困難な状況を嘆いている。国の経済発展に伴い、プロリーグも盛り上がり、代表チームの強化も図られる状況になってきていただけに、ファンの心中はもどかしさでいっぱいだろう。


FIFAは制裁の期限を「PSSIが規定を遵守するまで」としているが、現在のところ解除、活動再開の見通しは見えていない。8月にFIFA内でこのインドネシアサッカー協会に対する制裁措置を検討する会議が持たれるともいわれているが、果たして。

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(アジアサッカー研究所/長谷川)