• コラム

2015年9月5日 | 台湾

台湾にサッカーを!高校サッカー界の名将とATHLETAの挑戦(3/3)

台湾サッカーの育成に、日本高校サッカー界の名将とATHLETAがタッグを組んだ。

2015年6月27日、28日に台湾新竹県にて行われた「ATHLETA杯 第1届菁英計劃對抗賽」を、現地からリポートする。

>>台湾にサッカーを!高校サッカー界の名将とATHLETAの挑戦(2/3)を読む


はたしてこの少年たちの受け皿となる環境はどうなっているのか?気になるところだ。台湾では黒田 和生氏を中心にU-13、いわゆる中学生年代への普及、育成も進めようとしているが、この年代の現状は次のとおりだ。


台北市内を回ると、至る処に受験や留学・語学教育に関する広告が目に付く。日本以上に受験熱が高く、「スポーツ」<「勉強」の考え方が根強い。日本のように文武両道という価値観や、教育の一環としてクラブ活動を設けるといった価値観はなく、中学生になると「勉強班」と「スポーツ班」にわかれ、その「スポーツ班」の地位は残念ながら「勉強班」に劣るという構図だ。


さらに上の高校生年代になると、それがより顕著になる。日本では全国高校サッカー選手権への予選出場校数が4,000校余りを数える一方で、台湾でのそれは僅かに17校という数字が何より物語っている。


絶望的な環境に見えなくもないが、黒田氏に帯同するかたちでチャイニーズタイペイサッカー協会に派遣、U-12育成統括を務める平田 礼次氏は「下から上から嵌めれば、台湾は上手くいく」と表現した。


「下の部分でいえば、少年層の育成は黒田先生が力を入れられたことで、この4年間で根付き始めたと思います。」このアスレタ杯でも見られたように、熱心な指導者も育ちつつある。


上の部分とは、つまり、政財界へのアプローチだ。


「日本も、何人かのリーダーがサッカーの価値を認めてもらう過程で、政界・経済界を巻き込んでいった経緯があると思うのですが、その点では台湾はまだまだ。政府、企業の指導層に理解のある人間が少ないです。いわゆる中国本土の、スポーツと政治の悪い意味でのコネ、ネガティブなものを引きずっているような。そういった50代より上のジェネレーションと、30代より下の民主的なジェネレーションとの価値観にギャップがある。まだまだスポーツの価値を理解してもらえる活動が必要なんです。その点も、黒田先生が来られて色んなしがらみをクリーンに、繋いでいる状況です」。


こちらのアプローチについてもまた、困難な問題は立ちはだかっている。黒田氏の活動に肯定的だった林振義・チャイニーズタイペイサッカー協会前理事長が辞任、今後行われる理事長選挙次第では、黒田氏の進めてきた活動に影響を及ぼす懸念がある。


大会優秀選手(U-12)らと黒田氏。彼らの受け皿を整備し続ける中で、問題も多い。

大会優秀選手(U-12)らと黒田氏。彼らの受け皿を整備し続ける中で、問題も多い。


先行き不透明な課題を内包するものの、大会2日間を見る限り悲観的な印象よりも、どこか前向きな気持ちを抱くのは何故だろう。黒田氏の笑顔なのか、各地域の指導者と結ぶ信頼関係か、アスレタとのタッグの強さか…。


この蒔かれた種がどう膨らむのか、とかく近年東南アジアに目が向きがちなサッカー界だが、地に足を付けた育成を重んじる台湾も、近い将来面白い存在になる、と感じた。(終)


>>台湾にサッカーを!高校サッカー界の名将とATHLETAの挑戦(1/3)

>>台湾にサッカーを!高校サッカー界の名将とATHLETAの挑戦(2/3)

(アジアサッカー研究所/田畑)