• コラム

2016年1月5日 | 中国 | 台湾 | 香港

成長著しい中華圏サッカー事情2015(中国・香港・台湾)


〈中国〉
P1080515中国「大陸」本体(香港や台湾を除く、という意味)では、まず政治指導者が国策としてスポーツ産業の発展(今後約100兆円規模を目標)を掲げ、その中心に「サッカー」が据えられたことが中国サッカー界にとってビックインパクトとなった。この影響もあり、上海を中心に新たなサッカースクールの立ち上げによる既存スクールからの指導者の引き抜き合戦が起こり、指導者の給与がインフレ状態になっている。中国特有の投機的な動きであり、出ては消えてゆくサイクルではあるものの、国策の一環である学校にサッカー部を創る動きと併せてみると、中国サッカー人口の拡大は確実に進んでいる。

次に、クラブと代表を比較するとはっきりと明暗が分かれる。広州恒大のACL制覇をはじめ他のクラブも潤沢な資金を背景に着実に力をつけている。2015年のACLの一次リーグの結果を見ればJクラブと3勝2分3敗と互角であり、Jクラブにとって広州恒大以外のクラブも無視できなくなっている。一方、代表はどうかと言うと、中国サッカー関係者に「チャイナショック」が起こる。W杯アジア2次予選で香港にホーム・アウェイともにスコアレスドロー。現在、予選グループ内の他国より1試合少ない状況でグループ3位、得失点での優位性はあるものの、中国・香港ともにグループ首位のカタール戦を残しており、結果次第では中国代表の2次予選敗退もありうる。3月24日の香港・カタール戦、3月29日中国・カタール戦は目が離せない。

最後に、監督・コーチなどの指導者という観点から見てみる。2015年、2016年は日本で馴染みのある監督がCリーグに活躍の場を移している。広州恒大のスコラーリ監督、広州富力のストイコビッチ監督、杭州緑城のトルシエ(※途中解任)監督、来シーズンからホン・ミヨンボ監督、そして北京国安にザッケローニ氏が濃厚(2016年1月2日現在)。指導者として、現在JFAから江蘇省女子ユース監督に1名派遣されており、その他杭州緑城には複数の日本人指導者が在籍している。杭州緑城以外でも複数のクラブから「日本人指導者」と日本人指導者主導による「アカデミーの体系化」の依頼の話を聞くようになった。最新情報では、2016年1月3日に元川崎フロンターレ監督の高畠勉氏ほか3名の指導者が、今年から一部リーグに昇格する河北華夏幸福FCのアカデミーに就任することがクラブの公式ウェブサイトで発表された。また、1月4日には杭州緑城FCのコーチとして前ロアッソ熊本監督の小野剛氏が就任することも発表された。当面、この流れは続くことが予測される。

50面のピッチを保有する中国最大のサッカーアカデミー・恒大足球学校

50面のピッチを保有する中国最大のサッカーアカデミー・恒大足球学校


これまで育成をほぼ無視(違うところから金で買えばよい)していた中国サッカー界がチャイナショックを経て、育成に本腰をいれはじめた。JFA、Jリーグ、Jクラブ、そして多くのサッカー関係者に今後中国からの打診が届くことになるだろう。アジアサッカーの中心は市場規模で考えるとやはり中国であると考える。この中国サッカーの盛り上がりを一過性のものにしないためにも、これまで日本サッカーで培ってきたノウハウ、ソフト面を2016年は中国に輸出してほしい。中国サッカーが強くなることも、今後のアジアサッカーそして日本のサッカーが世界で存在感を出していくために必要な要素だ。




〈香港〉
独立行政地区である香港にとって、2015年は歓喜に沸いた年になる。W杯アジア2次予選で現在2位につけている。中国から2試合のスコアレスドローで勝点2をもぎ取り、次戦のカタールに勝ち、最低でも引き分ければ、最終節カタール戦を残す中国に相当のプレッシャーをかけることができる。また、香港が中国と引き分けたことにより、香港への当てつけと噂されることが起こった。中国のリーグ規定が変更され、香港、マカオ、台湾の選手は外国人選手(2016年以降に契約する選手から)とみなすことになった。中国の自国選手の出場機会確保と強化を目的とされているが、チャイナショックの影響はここでも見られたのではないかと思う。人口700万人であり、育成年代に課題はあると聞く香港ではあるが、サッカーに何が起こるか分からないということを証明してくれた香港の今後に注目したい。




〈台湾〉
台湾サッカー③2015年は台湾サッカー界にとって大きな一歩を踏み出した年となった。まずW杯アジア2次予選に出場できたこと、そして台湾サッカー史上初である入場料の有料化に踏み切ったことが挙げられる。これまで代表戦であってもすべて無料だったのが、アジア2次予選途中から200台湾ドル(約800円弱)の有料制に変更された。心配された観客動員数も1万人を超え、サッカーファンが増加していることを裏付けた。

また、企業名のついた大会が開催されたことも大きな出来事だ。昨年12月に開催された「TOSHIBA CUP」(台湾女子代表と日本ユニバーシアード代表の試合)は、企業がスポーツを支える・応援することに稀薄な台湾スポーツ界に新たな潮流を生み出すきっかけになったのではないかと予想される。育成年代でも同じく企業名のついた大会が開催された。日本のトレセン制度を模した「台湾エリートプログラム」が台湾の6地区(台北・新竹・台中・台東・高雄・花蓮)で始まった。2015年6月に、この定期対抗戦の大会に日本のサッカー・フットサルウェアで有名な「ATHLETA」がスポンサードし「ATHLETA杯 第1届菁英計劃對抗賽(第1回エリートプログラム対抗戦)」が開催された。第2回は2016年1月末に台東で開催される予定で、普及・育成・強化が着実に根付いてきているといえる。

現在サッカー協会には4名の日本人が在籍しており、JFAの派遣で3名、現地採用として1名、うち2名は女子代表監督とGKコーチ、残り2名は育成年代を担当している。そのうちの1人は兵庫県滝川第二高校、ヴィッセル神戸育成担当を務められた黒田和生氏であり、台湾エリートプログラムを主導されているのも同氏である。育成に時間は必要であるが、日本のノウハウを吸収し、実践している台湾サッカーは2016年も確実に成長していくだろう。

(アジアサッカー研究所/松下)