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2016年1月15日 | 中国

日本人サッカー指導者海外就職!〜「次世代アジアサッカー大国」中国への道

P10804991月2日にアジアサッカー研究所Facebookにアップした【元フロンターレ監督 高畠氏、中国クラブへ】は、1日で10,000人を超えるリーチがあり、中国サッカーの関心度の高さが伺えた。そこで、当研究所では今後アジアサッカーの中心になることが予測される中国で、日本人指導者が活躍するための「虎の巻」としての情報を提供したい。

現在、当研究所が把握している日本人指導者の人数は8名以上。詳細は以下をご確認頂きたい。


◇中国にいる日本人指導者 2016年1月3日現在 ※敬称略

■超級リーグ(1部)
○杭州緑城   育成年代   日本人複数名(神戸昌宏)
○河北華夏幸福 育成年代   日本人4名(高畠勉、柳田伸明、矢野玲、古島清人)
○広州富力   トップチーム 日本人1名(喜熨斗勝史)

■中乙リーグ(3部)
○銀川山嶼海賀蘭山(西安より北北西に700km) トップチーム 日本人1名(内田一夫)

■JFA(日本サッカー協会)派遣
○江蘇省女子ユース監督 日本人1名(金子隆之)


日本人指導者が求められるケースはざっくり3つのカテゴリーに分けることができる。

1.トップチームの監督・コーチ
2.全国運動会(日本でいう国体)の監督・コーチ
3.育成年代の監督・コーチ


1.トップチームの監督・コーチ
元日本代表監督、杭州緑城の監督を務められた岡田武史氏がこれにあたる。超級リーグとなると広州恒大のスコラーリなど世界でも有名な監督が起用されることから、日本人の監督での就職の可能性は今後も非常に低い。ただ、喜熨斗氏のように監督通訳兼フィジカルコーチなどコーチでの就職は監督と比べるとハードルは低い。

2.全国運動会の監督・コーチ
中国では、4年に1度日本でいう国民体育大会が開催される。この大会の注目度はオリンピック・アジア大会に次ぐ注目度の高さで、全国運動会の結果如何で各政府関係者の今後の出世が決まるとまで言われている。サッカーは、U20・U18・U16の年代で開催され、前回2013年U18決勝は日本人監督同士の対決となった。遼寧チームの監督は倉田安治氏、浙江チームの監督は石崎信弘氏、結果は2-0で遼寧チームが優勝した。次回2017年12月に天津で開催される。各都市ともに、全国運動会の数年前からプロジェクトが開始される傾向にあることから、全国運動会での監督・コーチでの就職の狙い目は、2018年1月から売込みをかけると良い。

3.育成年代の監督・コーチ
驚くことに中国の各クラブで育成年代・下部組織を持つところは少ない。杭州緑城、広州恒大、広州富力、山東魯能の4大足球学校(サッカーアカデミー)以外で、小学生からチームを保有しているところはほぼない、と言える。ACL常連の北京国安も小学生のチームを保有していない。2016シーズンから超級リーグに参加する河北華夏幸福もサテライトまでしかなく、高畠氏ほか3名の日本人チームで新たに下部組織を創設する。当研究所は昨年11月に同クラブがJクラブと提携したいとの情報をキャッチしており、「育成年代・下部組織の体系化」を重視している点から予測すると、今後も育成年代を持たない超級リーグ・中甲(2部)のクラブでの日本人監督・コーチの需要は大いにある。


Q. 求められる人材とは?
ありきたりではあるが、ライセンスはS級、A級を保有していることが望ましい(B級、C級ライセンスにも可能性はあるがコーチまで)。日本世代別代表チーム・Jクラブでの監督・コーチ歴(下部組織含む)があると話は進みやすい。英語・中国語など外国語ができるとアドバンテージはあると予想される。その他、中国ではGKコーチ・フィジカルコーチが少ないため、このルートからの就職も大いに可能性はある。

Q. 給与と現地の生活は?
数年前、広東省女子チーム(全国運動会用)の募集概要はざっくりではあるが、以下の通り。
1)3000万円/年間予算
2)1の予算内でアシスタントコーチ・GKコーチなどを必要な人材を自身で手配
3)日本への往復チケットなど福利厚生も予算内で調整
4)住宅費、水道光熱費、食費は基本不要(クラブ各都市の施設内での生活のため)
河北華夏幸福の日本人スタッフの陣容をみると、広東省の募集概要と変わらないため、恐らく年間予算は3000~5000万円ぐらいではないかと予測する。

現地の生活は、クラブ・各都市が持つ施設内に宿泊施設を利用する。食堂もあるため、生活面において出費らしい出費はない。ただ広州恒大サッカーアカデミーのように施設内での飲酒を禁止しているところもあり、休日郊外にある施設から数時間かけて市内に出かけないといけないこともある(広州恒大アカデミーのスペイン人コーチが嘆いていた)。


まとめ
スポーツ/サッカーの発展を国策とした中国。トップクラブでも草の根でも日本人指導者のニーズは高く、河北華夏幸福に続くクラブも今後増えていくだろう。当研究所では、次のニーズとして、指導者を養成できる人材、フロント人材のニーズが高まってくると予測する。Jリーグができて23年、その間に日本はアジア有数の強豪国となり、ワールドカップにも5大会連続で出場している。23年で培ったノウハウが「次世代のサッカー大国」中国に活かせる可能性は非常に高い。アジアサッカーのレベルアップが日本サッカーの強化に繋がるというコンセプトを持つJリーグのアジア戦略。海外から日本を強くする。

(アジアサッカー研究所/松下)