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2016年1月19日 | シンガポール

2015年のシンガポールサッカー総括/日本戦でインパクトを残すも、「停滞」が目立った1年に

FullSizeRender-1シンガポールが盛大に「建国50周年」を祝った2015年は、同国サッカー代表が日本でかつてない脚光を浴びた年となった。6月に埼玉スタジアムで行われたワールドカップ予選で、シンガポールはFIFA世界ランキングで100位以上の差がある日本を相手にスコアレスドローで逃げ切り、殊勲の勝点を奪った。

なかでも輝きを放ったのが、次々とゴールを襲った18本のシュートを止め続けたGKイズワン・マーブドだ。11月にシンガポールで行われた再戦でも、なすすべもなく0-3で敗れたチームにあって、最後尾でひとり気を吐いて好セーブを連発。試合後には日本代表ハリルホジッチ監督からも賞賛の言葉が贈られた。12月には松本山雅FCのトライアルにも参加し、地元サポーターからサイン攻めに会うなど大きな注目を集めた。惜しくも契約には至らなかったが、近い将来に「シンガポール人Jリーガー」が誕生する可能性を垣間見せてくれた。

日本戦では健闘が光ったシンガポールだが、それ以外の場面では年代別代表を含めて停滞もしくは後退した場面が目立った。フル代表は1試合を残してワールドカップ予選敗退が決定。ワールドカップと予選を兼ねているアジアカップ本大会への出場の可能性は残したが、今年4月に任期切れとなるシュタンゲ代表監督は、そのまま退任する可能性が濃厚と見られている。

U-23代表が出場するSEAゲームス(東南アジア版オリンピック)では、地元開催の後押しで初優勝が期待されたものの、ミャンマーとインドネシアに敗れてグループリーグで姿を消した。さらにU-19代表、U-16代表もアジア選手権本大会への切符を逃している。一方、近年躍進著しいタイは、SEAゲームスを圧倒的な強さで優勝、U-19代表とU-16代表でも予選同組だったシンガポールを退けて本大会への出場を決めた。東南アジアサッカーで覇権を競ってきた両国だが、ここにきて大きく差が開きつつあることは否定できない。

若年層からの強化に本腰を入れることを決めたシンガポールサッカー協会(FAS)は、ベルギーでユース年代の指導法を確立したミシェル・サブロン氏をテクニカルディレクターとして招聘。国内すべての小学校や人民協会(地域コミュニティ運動を目的とした政府系組織)にも協力を求め、一貫したビジョンに基づいて6歳から指導を行うコーチングマニュアルを発表した。サブロン氏の手腕によって選手育成が充実したベルギーは、FIFA世界ランキングで1位に輝くまでの躍進を遂げただけに、シンガポールでもフル代表の強化までつながることが期待されている。

年末にシンガポールのサッカーファンを驚かせたのが、隣国マレーシアのリーグ戦に参加していたライオンズXII(トゥエルブ)の突然の解散だった。FASがマレーシアサッカー協会と交わした覚書に基づいて、シンガポール代表の若手選手を中心に結成されたライオンズXIIは、2013年にマレーシア・スーパーリーグを制覇、今年はカップ戦で優勝しており、ジャランベサル・スタジアムで行われていたホームゲームには毎回多くの観客が詰め掛けていた。しかし、マレーシアサッカー協会は覚書の延長に同意せず、ライオンズXIIは4年間の活動に幕を閉じることとなった。

国内のクラブシーンでは、SリーグでブルネイのDPMM FCが初優勝を飾ったほか、シンガポールカップとリーグカップはいずれもアルビレックス新潟シンガポールが獲得し、国内3冠すべてで外国人チームのが優勝する初めての事態となった。シーズン終了後のリーグ表彰式でも、アルビレックスの木暮郁哉が最優秀選手賞に輝いたほか、最優秀監督賞、最優秀若手選手賞、得点王の主要部門すべてを外国人が独占した。2016年はライオンズXIIに所属していた選手たちが国内に戻ってくることで、近年では見られなかった注目がSリーグに集まっており、ローカルクラブの巻き返しにも大きな期待がかかっている。

日本サッカーとシンガポールのつながりに目を移すと、前述のワールドカップ予選のほかに、育成年代や草の根レベルでの交流が目立った1年だった。大宮アルディージャがシンガポール・サッカー・スクールとパートナーシップを締結して育成年代の選手や指導者の交流を進めることを決めたほか、松本山雅はシンガポールからユース選手3名を練習参加で受け入れた。また、ワールドカップ予選の日本戦に合わせて『キャプテン翼』の作者・高橋陽一さんがシンガポールを訪れて各種チャリティ活動を行い、集めた募金をシンガポールの障がい者サッカーチームに寄贈している。こうした地味な活動が、両国サッカー界のさらなる交流発展につながっていくことを期待したい。

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ハーフタイムはピッチ上で高橋陽一氏(中央)から障がい者サッカーチーム・ザイヌディン監督(左)に募金が手渡された


多くの日本企業が東南アジアにおける企業活動の拠点を置いているシンガポールだが、サッカーシーンでは「ハブ」になっているとは言い難いのが現状だ。13億シンガポールドル(約1100億円)の巨費を投じて2014年に完成した総合スポーツ施設「スポーツハブ」は、日本代表とブラジル代表の親善試合やSEAゲームスのメイン会場としても使用されたが、高額な使用料がネックとなって稼働率は低いままとなっている。今年1月に横浜Fマリノスや上海申花、ミャンマー代表を招待して開催される予定だった「マーライオンカップ」も、高額な使用料を支払うめどが立たず、開催中止を余儀なくされた。シンガポールサッカーを盛り上げていくためには欠かすことのできないスタジアムだけに、今後の対応が注目される。

シンガポールサッカーがアジアや世界の舞台で活躍するには、まだまだ前途多難だが、2016年がそのきっかけの年となることを念じてやまない。

(アジアサッカー研究所/安藤)