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2016年11月11日 | ベトナム

Jリーグ“ベトナムダービー”の功罪、過剰PRや起用法に批判の声

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トゥアン・アインの欠場を伝える現地メディア。 本文中には「失望」の文字も。

10月16日にケーズデンキスタジアムで開催されたJ2リーグ第36節水戸ホーリーホックと横浜FCの試合は、両チームにベトナム人選手が所属することから「ベトナムダービー」と銘打たれて大々的なPRが行われ、試合前から日本・ベトナム両国で大きな注目を浴びた。しかし、ふたを開けてみれば、横浜FCのグエン・トゥアン・アインが怪我でメンバー登録から漏れたうえ、水戸のグエン・コン・フオンも終盤に顔見せ程度で途中出場するにとどまった。名ばかりとなった「ベトナムダービー」にファンは失望し、SNSでは所属クラブに対するベトナム人からの誹謗中傷のコメントが相次いだ。

今季、ベトナム1部ホアン・アイン・ザライ(HAGL)から水戸と横浜FCにそれぞれ期限付き移籍したFWグエン・コン・フオンとMFグエン・トゥアン・アインは、母国のファンから「ベトナムのメッシ」、「ベトナムのピルロ」と呼ばれるスター選手。昨年トップチームに昇格したばかりのため、プロでの経験はまだまだ乏しいが、アンダー世代のベトナム代表で大活躍して一躍国民的アイドルとなり、現在はA代表にも名を連ねている。

日本では、「ベトナムの英雄」こと元コンサドーレ札幌のFWレ・コン・ビンに続く、ベトナム人Jリーガーとして注目されたが、ここまでのリーグ戦の出場試合は、グエン・コン・フオンが5試合(うちスタメン1試合)で出場時間は80分。一方のグエン・トゥアン・アインはいまだ出場試合ゼロ。出場機会が巡ってこないことによるパフォーマンス低下が懸念されている。

そんな中で迎えた「ベトナムダービー」は、今シーズン中に両者が直接対決する最後のチャンス。アジア戦略を推進するJリーグやベトナム市場の開拓を進める茨城県が協力して、スタジアムに在日ベトナム人を招待し様々なイベントを実施。さらに、ベトナムではイオンモールでパブリックビューイングを開催するなど、積極的なマーケティング活動を展開した。

試合前まで大きな注目を集めた「ベトナムダービー」だったが、スタメン発表でグエン・トゥアン・アインの欠場とグエン・コン・フオンのベンチスタートを知った瞬間、ベトナム人の多くが興味を失ってしまった。特にトゥアン・アインについては、数日前の練習で負傷しており、欠場が事前に分かっていたにもかかわらず、試合直前までそのことが告知されなかったことに多くのベトナム人が憤った。

また、87分に途中出場したグエン・コン・フオンは一度もボールに触ることすらなく試合終了(1-1ドロー)。10月初めにホーチミン市で行われたベトナムと北朝鮮の親善試合(5-2で勝利)でもグエン・コン・フオンは途中出場したものの、動きが鈍く殆どチャンスに絡めず、地元の辛口評論家から「同点弾を決めたグエン・トゥアン・アインと比べて成長が見られない。チームメイトの足を引っ張る存在だった」と酷評された。

両選手はベトナム時代の所属元クラブが若手重視ということもあり、ほぼ全試合でスタメン出場していた。ファンが懸念しているのは、日本での試合勘不足が今年末のAFFスズキカップや来年の東南アジア競技大会(SEA Games)のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことだ。この二つの大会は現時点で、東南アジアのサッカーファンにとってオリンピックやワールドカップよりも重要な大会である。

当初は日本移籍を好意的に受け止めていたファンやメディアだったが、現在は批判的な意見も多く聞かれるようになっている。両選手の移籍期間は今シーズン終了までだが、水戸と横浜FCは契約延長を希望しているとされる。これについては、ファンの間でも意見が分かれており、反対側からは「どうせマーケティング目的で出場機会はないのだから、選手として活躍できる貴重な時間を浪費すべきではない。すぐにベトナムに戻るべき」、「チームスタイルとの相性が悪い」という意見があがっている。

一方、賛成側は、「たとえ試合に出られなくても、レベルの高い日本で練習して海外での経験を積むだけで大きな意味がある。日本移籍以降、フィジカルや戦術理解にも改善が見られるので、あと1年頑張ってほしい」と述べている。

日本とベトナム、所属先クラブと所属元クラブ、そして両国のサポーター。思惑や意見は様々だが、選手間交流や新規スポンサー契約など、せっかく形になりはじめたアジア戦略であるだけに、なんとか打開策を見つけていってほしいものだ。

(アジアサッカー研究所/宇佐美)

※ 本稿は「ハーバービジネスオンライン」にも掲載しています