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2017年2月3日 | ベトナム

トヨタ・Vリーグ2017開幕!元Jリーガーたちの活躍に注目

Vリーグ初昇格を決めたHCMCのサポーターたち。

Vリーグ初昇格を決めたHCMCのサポーターたち。

Vリーグ2017シーズンが1月7日に開幕した…と言ってもバレーボールのVリーグではない。ここで扱うのはベトナムプロサッカーリーグ(略称Vリーグ)。正式名称はトヨタ・Vリーグ1。3年前からトヨタ自動車の現地法人であるトヨタモーターベトナム(TMV)が冠スポンサーを務めており、東南アジアでは、タイやマレーシアに次ぐレベルと規模を誇る強豪リーグとして知られる。

Vリーグ1は現在、14チームで争われているが、昨シーズン最終節の時点で4チームに優勝の可能性が残ったことからも分かるよう、全体的にクラブ間の力が拮抗しており、最後まで優勝の行方が読めないスリリングなリーグとなっている。今回はそんな知られざるVリーグの魅力について紹介しよう。

近隣のライバルであるタイリーグと比べると、過去から現在に至るまで日本人選手が非常に少なかったせいか、日本におけるVリーグの知名度は著しく低い。日本人選手が契約しにくい理由はいくつかあるのだが、主な理由としては、外国人枠が2015年から2人に縮小されて競争が非常に激しくなっていること。そして、高身長のアフリカ系や欧米系の選手が好まれため、アジアからの助っ人の需要が極めて少ないことなどが挙げられる。また、必要とされるポジションも限定的で、求められるのは身長185cm以上のセンターフォワードあるいはセンターバックのいずれかである。

とはいえ、日本のサッカーファンには、やはりJリーグに所縁のある選手が所属するクラブのほうが興味を持ってもらいやすいだろう。日本人選手が所属するクラブは現在、ホアン・アイン・ザライ(HAGL)だけ。同クラブでは、昨季から元横浜FCの井手口正昭(日本代表MF井手口陽介の実兄)、今季から元SC相模原のDFフェアー・モービー(元U-17アメリカ代表)がプレーしている。さらに、昨年までJ2リーグに期限付き移籍していたベトナム代表のFWグエン・コン・フオン(元水戸)とMFグエン・トゥアン・アイン(元横浜FC)も所属するなどJリーグ経験者が多数在籍している。

繋ぐサッカーを標榜するHAGLはスタメンの殆どを下部組織出身の20代前半の若手が占めている。現在は経験不足からVリーグではなかなか結果を残せずにいるが、アンダー世代のベトナム代表で中核を担ってきたグエン・コン・フオンらが国民的アイドルと化しているため、毎年残留争いをしているにもかかわらずクラブ人気は異常ともいえる程高い。彼らがプロデビューした2年前のシーズンは、HAGLがリーグ全体の観客動員数を大幅に引き上げたとさえ言われている。今シーズンは、1年ぶりにグエン・コン・フオンとグエン・トゥアン・アインが復帰。日本での武者修行を終えた彼らがどんな活躍を披露するのか注目したい。

”ベトナムの英雄”レ・コン・ビン。 今季からHCMCの会長に就任した。

さて、Jリーグと所縁のある人物と言えば、忘れてはいけないのが“ベトナムの英雄”ことレ・コン・ビンだ。東南アジア出身のJリーガー第1号として、2013年に当時J2のコンサドーレ札幌で約4か月プレーしたレ・コン・ビンは、昨年末のAFFスズキカップを最後に現役引退したばかりだが、なんと31歳の若さにしてベトナム1部ホーチミン・シティ(HCMC)の会長に電撃就任した。HCMCは昨季のディヴィジョン1リーグ(2部)で優勝して今季がクラブ創設以来初のVリーグ1参戦。レ・コン・ビン効果で注目されるHCMCは開幕からここまでの数試合で、2部リーグ時代の3~4倍の観客がスタジアムに押し寄せるようになっている。また、今年は国内最大の経済都市であるホーチミン市に拠点を置くクラブがHCMCとサイゴンFCの2クラブになったことで、久しぶりに“サイゴンダービー”が復活し、コチラも注目が集まっている。

大都市ホーチミンでのクラブ運営は非常に難しく、過去にクラブの設立と解散を続けてきた負の歴史があるため、地元クラブに対するファンの視線は冷たい。昨年シーズン中にハノイ市から移転してきたサイゴンFCと今年1部に初昇格したHCMCは、長く地元に愛されるクラブを目指し、Jリーグやタイリーグなどを手本に様々なファンサービスを展開しており、両クラブは今後、ピッチ内外でも競い合うライバルとなりそうだ。

また、今年はU-19ベトナム代表のメンバーらが本格的にプロデビューを飾るシーズンとなる。U-19ベトナム代表は昨年のAFC U-19選手権2016でベスト4に進出し、今年韓国で行われるU-20ワールドカップ2017の出場権を獲得した。これはグエン・コン・フオンらを擁して“黄金世代”と呼ばれた3年前のU-19代表でもなし得なかった快挙。JリーグやKリーグがアジア戦略を推進する中、今後もベトナムや他の東南アジア各国から移籍する選手が増えてくると予想される。特に育成に注力しているベトナムでは、若いタレントが続々と育っており、早いうちから未来のスターに注目しておくのも楽しみの一つだ。

※ 本稿は「ハーバービジネスオンライン」にも掲載しています




宇佐美 淳(うさみ じゅん)
1981年生まれ、愛知県出身、ベトナム・ホーチミン在住の翻訳家兼ライター。2005年にベトナムに渡り、5年間日本語教師として語学センターや大学で教壇に立った後、2011年にベトナム情報配信サイトの運営会社に就職して編集長を務め、2014年に退社。在職中の2013年にベトナムサッカーの専門サイト「ベトナムフットボールダイジェスト」を立ち上げ、現在も個人で運営を続ける。「アジアサッカー研究所」や「フットボールチャンネル」などでコラムを連載中。