• コラム

2017年9月20日 | シンガポール

シンガポールサッカーの窮地、今こそ変革のとき


今年のSリーグもいよいよ終盤戦に差し掛かってきた。

毎年のようにチームの入れ替わりがある安定しないSリーグだが、今年は昨年と同じ9チームでの戦いとなっている。そして昨年に引き続き、首位独走中のアルビレックス新潟シンガポール。全24節中20試合を終え、16勝2分2敗の勝点50と、2位のタンピネス・ローバーズの勝点40を大きく引き離し、「ほぼ独走」している。
※「ほぼ独走」というのは、2位のクラブの消化試合数が18試合、3位のクラブ(ホーム・ユナイテッド、勝点34)の消化試合数がアルビレックスより4試合も少ない16試合とバラバラで、一見勝点の差が大きいようで、そうでもなかったりすることから起因している。

開幕戦のコミュニティシールドを制し、またシンガポールリーグカップも獲得しているアルビレックスは、すでに2冠。今年もリーグ戦の優勝が確実視されていて、さらにはシンガポールのFAカップ(Singapore Cup)でもベスト4に名を連ねている。

今年も4冠を達成すると、昨年からなんと8タイトルを連続で総ナメということになる。シンガポールの日本人コミュニティを代表するチームの活躍は、当地の日本人としても誇らしい気持ちになる。

一方、シンガポールのローカルファンの中には、いつまでも外国人チームがタイトル(および賞金)を独占し続けていることをよく思っていない人たちもいるのも事実だ。確かに、過去の経緯はともかくとして、普通のローカルクラブは外国人選手の登録制限数(3人)があるのに対して、アルビレックスにはそれが適用されず、逆に、所属選手はすべて日本人に限定されている。

リーグに所属する全9クラブのうち、アルビレックスに加え、実質シンガポールU-23代表となっている「ヤング・ライオンズ」、ブルネイのクラブチーム「ブルネイDPMM」という特殊クラブを除くと純粋なローカルクラブは6クラブしかない。そこに代表合宿などで代表候補25-30人くらいが呼ばれると、各クラブ4-6人くらいの主力選手を代表の活動に持って行かれてしまうのである。代表招集のないアルビレックスが無双を続けられるのもこんな理由があったりもする。(もちろん近年のアルビレックスが純粋に強い、ということも忘れてはならない)



ローカルファンにとって、やや諦めの境地すらも感じられるSリーグで、上述のヤング・ライオンズが解散するような話もあり、来年こそはなんらかのテコ入れが期待される(毎年言っている気もするが)Sリーグだが、ここにきて来季のリーグ運営そのものに暗雲が漂ってきている。

まだ正式に決まったわけではなさそうだが、リーグや協会の大型スポンサーとも言える「tote board」(日本語的にいうと、公営賭博管理庁)がSリーグへの補助金の大幅な削減をすると噂されている。各クラブもこの分配金に大きく依存した経営・運営を行っており、各クラブの経営者は戦々恐々としている状況だ。昨年から続く、Sリーグのアマチュアリーグ化(プロリーグ消滅)の可能性がまたも再燃しているところである。

上述したが、試合の組み方がバラバラだったり、会場や日程がコロコロ変更したり、リーグの運営としても、とても先進国の運営とは思えないことが多々起きるのがSリーグ。各クラブの運営も決して万全なるプロフェッショナルなクラブと呼べるところは皆無と言っていいだろう。

政府の力が強いこのシンガポールにおいて、スポーツや体育関係を司る省庁も現在のこのシンガポールサッカーの状況をシビアに見ていると思われるが、今後の動きは、ファンのみならず、サッカー関係者もかなり注視している状況だ。

しかしながら、国内リーグに全くと言ってもいいほど関心がないシンガポール国民にとっては、あまり重大関心事項ではないかもしれない。


フル代表はASEAN諸国のプライドを賭けた大会「Suzuki Cup」でも勝てず、U-23の最重要大会「SEA Games」でも一次リーグ敗退、下部カテゴリーでも全くパッとした結果を残せてないシンガポール。国の経済の発展から、完全に取り残されたというか、むしろ逆行して下方に進むシンガポールサッカー。当地で奮闘する日本人サッカー関係者は口を揃えて言う。

「シンガポール人が本気にならなければ、変わらない」

今こそ、協会、リーグ、クラブ、指導者、選手が一丸となった改革が求められている。



四方 健太郎(よも けんたろう)
立教大学を卒業後、アクセンチュア株式会社の東京事務所にて、主に通信・ハイテク産業の業務改革・ITシステム構築に従事。2006年より中国に業務拠点を移し、大中華圏の日系企業に対すコンサルティング業務にあたる。2008年に独立後、1年かけてサッカーワールドカップ2010年大会に出場する32カ国を巡る「世界一蹴の旅」を遂行し、同名の書籍(双葉社)および、『世界はジャパンをどう見たか?』(経済界社)を上梓。現在、東南アジアやインドでグローバル人材育成のための海外研修事業に従事。現在はシンガポール在住。アジアサッカー研究所所長。東南アジアを中心としたサッカーニュースの配信や翻訳・PR、サッカー・フットサルチームの海外コーディネーション事業を営んでいる。