• コラム

2014年11月14日 | シンガポール

【イベントレポート】日本・シンガポールサッカーメディア座談会[後半]

12014年10月、日本代表vsブラジル代表が行われたシンガポールにて、アジアサッカー研究所(Institute for Future Asian Football)が、日本のメディアと現地シンガポールのメディアを集めた座談会(Singapore Japan Media Talk)を実施した。

両国の大手新聞社やインターネットメディアなどの記者が一堂に会し、シンガポール・日本およびアジアの未来のサッカーの発展のために、今後どのようなことが求められるかをディスカッションした。

当研究所では、この座談会を通じて、普段コミュニケーションが少ない日本と現地のサッカーメディアが話し合える機会を提供することで、両国およびアジアの相互理解が進み、お互いのサッカー界の発展の礎となることを目的として企画を行った。

座談会は基本、英語で進行されたが、適宜日本語でも概要が訳されるなどして、双方向のコミュニケーションが生まれていた。また、座談会の前には交流フットサルが行われ、言語によるコミュニケーションバリアを外したことが効果的であった。

<座談会アジェンダ>

・ 日本サッカー界の現状と課題/シンガポールサッカー界の現状と課題
・ シンガポールが日本サッカーに聞きたいこと
・ 日本がシンガポールやアジアに聞きたいこと
・ まとめ



後半:日本からシンガポールへの質問

前半を読む


Q1:Jリーグはシンガポールでどのくらいの知名度があるのか?(プレミアリーグやブンデスリーガと比べて)

− 欧州リーグの中ではプレミアリーグは放送時間帯の影響もあり一番人気がある。試合の放送時間が土曜の夜10時くらいからなので、みんな楽しんで見ている
− ブンデスリーガやリーガエスパニョーラだと深夜3時とかなので、比較的人気がない


(S)Jリーグの名前自体は知られているが、選手やチームの名前は知られていない。テレビではほとんど放送されてないので、インターネットくらいでしかJリーグを知る方法がない。土曜の夜にプレミアリーグが放送されるというのは、マーケットがあるからでしょう。ニュースで取り上げられるのもそうで、シンガポールの場合はプレミアリーグがリーガエスパニョーラ、ブンデスリーガやUEFAチャンピオンズリーグよりも優先されます。Jリーグに関しては欧州主要リーグのような環境が整っておらず、端的に言うと、情報量が極めて少ないのが現状だ。たまに、試合のライブ放送があるにはあるが・・・。

(S)私は幼いころに、カズ(三浦知良選手)を見てから日本のサッカーに興味を持った。1995年にイングランドで行われたアンブロカップを覚えているだろうか? そのころシンガポールから日本サッカーを知る機会は「ジャパン・アワー」という番組だった。1週間に1分程度のハイライトだけ。今ではyoutubeでもFacebookでもウェブによる映像配信でも何でもある。環境は確実に良くなっている。Jリーグの情報をもっと出して、欧州リーグに対抗していくことは可能だと感じる。Jリーグはとてもクリーンでプロフェッショナルなイメージ。競技力は高い、ピッチも良い、スタジアムも良い、ショップも良い、とても尊敬できるリーグだ。

(J)あなたのケースは少し特殊かもしれない。一般の人はどう思っているのか。

(S)やはり、一般的ではない。情報量の少なさの起因のひとつにとして、言葉の壁は大きいのではないか。私は清水エスパルスのファンだが、Jリーグクラブのウェブサイトを見ても情報がないし、映像のコメントも理解できないから、深く知るチャンスがない。もしJリーグが東南アジアをマーケットとして捉えるのであれば、言葉はプライオリティーNo.1“以上”のものだと思う。Jクラブだけではなく、代表チームも同様だ。シンガポールでの事前練習に取材に行ったが、スタッフも含めて日本選手団はなかなか英語で会話してくれないので、コメントを引き出すチャンスはなかった。こちらの問いかけにきちんと受け答えしてくれたのはカワシマ・エイジとハーフナー・マイクだけだった。

(S)Jリーグの過去の映像、全てのゴールシーンはオンラインで見られるのか?

(J)今はまだ全部は見られないが、これからYahoo!で見られるようになる予定。


Q2:どのようにすればJリーグは東南アジアやシンガポールでその存在感を出すことができるのか?

6(J)やはり言語なのか?

(S)言語でしょう。

(S)国際的に英語は歓迎される。

(J)一つの例だが、ディエゴ・フォルランを獲得したセレッソ大阪は、FacebookやTwitterで4言語の情報発信をしたプロモーションにトライしている。

(S)そのような取り組みは、Jリーグに選手を輩出している東南アジアの国にとっても良い。インドネシアからイルファンが日本に行っているでしょう。

(J)昨年は、コンサドーレ札幌に、ベトナム代表のレコンビンもいた。

(S)Jクラブが東南アジアの選手を獲るのは、東南アジアにおけるJリーグの知名度を高める。

(J)中田英寿やカズがイタリアに行った時に、日本のサッカーファンはセリエAを観たのと同じことと言える。

(S)質問の答えとしては、シンガポール人選手がJリーグでプレーすれば良いってことになるのだろうか(笑)

(J)中田英寿のセリエA移籍以前、カズがその最初のプレーヤーだったが、忘れてはならないのが彼のスポンサーであったケンウッドの存在だ。日本側の立場としては、更なる金銭収入が欲しいわけで、スポンサー付きの東南アジア選手が必要となる。逆の立場から考えて、つまり東南アジアの企業にとって、Jリーグは同じように投資する価値のあるリーグなのだろうか?

(S)過去にシンガポール女子サッカー選手で日本女子サッカーにトライアウトした事例があったが、その国(この場合日本)に自国の選手がプレーできるような状況と環境が色んな意味で整ってくればJリーグへの興味も増し、今とは違った投資判断につながってくるのでは。

(J)Jリーグが発足した頃と比べて、近年の中国は非常にお金持ちになった。しかし、現在J1に所属している中国人プレーヤーはいない。同様に好況のインドからは0人だ。経済環境の変化とは連動していないJリーグの東南アジア出身選手による外国人枠の占有率についてどう思うか?

(S)やはり英語。コミュニケーションを取れる人がほとんどいないのが問題。

(S)通訳がいないとコミュニケーションを取れないのはつらい。また、通訳を利用したとしても、以前に日本のアルビレックス新潟の施設訪問をした時に経験したが、質問やインタービューをした通訳から介して届けられる情報の量と質は充分ではなかった。

(J)選手だけではなく、コーチやマーケティングサイドのスタッフにも必須だということですね。日本人の英語に対するリテラシーの低さはサッカー界だけの問題では無く、国全体の状況がそうさせている。どうしたら改善できるだろうか?

(S)韓国の女子プロゴルファーは世界のトップで活躍している。彼女らは全員英語を話せて、それが身を助けている。それも、自分自身をマーケットに適応させなければならないからだ。ロシアのプロテニスプレーヤーの何人かも、英語を話すことでマーケットにおけるポジションを上げていっている。

(S)言語の壁を意識して克服することは重要だ。各選手がそれを意識することにより自分の市場を広げることができたり、その手伝いをするメディアと良好な関係を気付けたり、もちろんピッチの上でもいい影響をもたらす。たとえばスペインリーグに移籍するプレミアリーグの選手はスペイン語を勉強すると聞く。

(S)日本サッカー協会や日本代表チームでは、そのような英語習得についての指示は選手に対して行っていないのだろうか? 代表チームは国際試合があるわけだが。

(J)クラブ単位で、ユースチームやジュニアユースチームでは英語のレッスンを使っているところもあるようだが、浸透しているかというとそうではない。浦和レッズは結構やっていると聞くが、ただ選手の様子を見ていると、その重要性があまり伝わっていない気がする。

(S)日本語は英語とかなり異なる言語なので、英語を習得するのはかなりタフだというのは理解できる。なので、若い頃にもっと英語のトレーニングをやったほうがいいだろう。

(J)実際、日本でも英語の授業はあるんです!中学生からは毎日1時間、This is a pen、皆やってるんです。(一同笑)しかし、ほとんど誰も話せないということは、それが機能していないということではあるが。。

(J)シンガポールは4つの公用語があると聞いたのですが、皆さんどれくらいの言語を話せるのか?

(S)シンガポールの人は、ほとんどが2ヶ国語、3ヶ国語を話せる。

(S)英語と中国語が最も多い。他は英語とマレー語、英語・中国語・マレー語の3つなど。

(S)別に全ての言語が充分に話せなくても良いと思っている、コミュニケートできれば。

(J)質問の答えとしては、言葉以外に他にあるだろうか?

(S)Jリーグのチームが東南アジアで試合をやったら良いのでは。対戦相手は、、、シンガポール選抜とか?(ブラジル戦の前にはシンガポールリーグ選抜がユベントスと対戦)

(J)シンガポールにもチームがあるアルビレックス新潟が日本から来るのが良いのではないか?

(J)日本のアルビレックスにはスタープレーヤーがいないけど良いのか?

(S)シンガポールのアルビレックスもとても素晴らしいチーム。若い選手が多くて、サッカーも良い、結果も残しているし。

(S)我々は日常的にアルビレックス新潟シンガポールを目の当たりにしているから、そこを通じて、いかにJリーグのクラブ運営がきちんとなされているかが想像できる。

(S)この我々シンガポール側のリアクションを見たら、シンガポールにおけるアルビレックス新潟のポジションが理解できたのではないか。シンガポールは一つの例だ。そこで、先ほどの英語の問題が改善されていけば、もっともっと可能性が広がると思えないだろうか?


Q3:東南アジアの中で、近い将来成長するであろうサッカー市場はどこの国か?

chonburi

日本人選手やスタッフが多数所属するチョンブリFC (タイプレミアリーグ)

(S)タイだろう。シンガポールリーグよりレベルが高いし、発展している。投資が進み、良いコーチが来ているし、スタジアムもとても良くなっている。

(J)日本の代表を経験した選手達も今シーズン、タイをプレーの舞台として選んだりしている。

(S)カンボジアやミャンマーもサッカーに対する投資が進んでいるため、近い将来発展するだろう。

(S)ASEAN各国にはそれぞれの国でそれぞれ状況が異なる。タイはプロリーグが好況で選手も良いテクニックを持っている。ミャンマーは代表強化が進んでいる。しかし同時に、タイには強力なマフィアの存在、べトナムは幹部の汚職、ミャンマーは予算の縮小、インドネシアはリーグが3つに分裂していたなど、それぞれにポジティブな面とネガティブな面が混在しているのが現状だ。

(S)10年前では代表でもチームでもシンガポールは少し突出していたが、今は他の国も短期間でレベルを上げてきた。

(J)ASEAN Super League の状況はどんな感じでしょうか?

(S)来年スタートと言われている。東南アジア各国の1ないしは2の有名チームでリーグを行う。これはAFC Champions Leagueとは異なり、各国リーグから独立した存在で行うフォーマット。FIFAのチェックを受けている状態。国内リーグだけではレベル向上に不十分であり、各チームが協力してこのようなリーグを行えば、ファン、スポンサーをさらに刺激することができる。国内リーグは別に継続される。


Q4:シンガポールのサッカーメディア(雑誌、新聞、TVなど)の状況はどのような感じか?

(S)いくつか、プレミアリーグの専門雑誌があります。ローカルリーグのものはない。

(S)インターネットの普及が大きく、新聞などよりもネット上のスポーツニュースなどを見ている人が多数。特にソーシャルメディアで情報を入手している人が大勢いる。


Q5:スポーツベッティングについて

(J)スポーツベッティングはメディア(ニュースや新聞、雑誌など)に対して、ポジティブな影響を与えるか?

(S)スポーツベッティングの存在、影響は巨大。金が落ちる。最も大きいシンガポールプールズという企業は、Sリーグのメインスポンサーの一つになっている。

(J)ベッティングなしに、スポーツを見るという文化はあるのか?

(S)賭けはシンガポール内で一般的なもの。あらゆるスポーツで賭けが行われており、サッカーだけに限らない。Sリーグでも毎週、毎試合賭けが行われている。

(S)賭けは中国系の文化と言える。

(S)シンガポールのスタジアムにはカジノマシーンもある。そこの収益が大部分を占め、クラブ運営に大きく影響を与えているチームもあるくらいだ。


まとめ
“Jリーグが東南アジアをマーケットとして考えるのであれば、まずマーケットにアジャストしていかなければならない。そのキーとなるのは、言葉。英語を使って情報を発信していくことで、もともと評価の高いJリーグのプレゼンスを更に高めていくことが可能だ。”


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今回のような参加者が主体であり、双方向で忌憚なき意見を言い合える、そして通訳らしい通訳を挟まず、言語に依存しない形でコミュニケーションをしながら、両国そしてアジアの未来のサッカーを語り合う会は初めての試みだったのではないだろうか。当研究所が目指しているアジアサッカーの未来はこのような相互理解から創られていくと確信した。今後はシンガポールのみならず、またメディア関係者に留まらずにいろんな対話の機会を設けていきたいと考えている。

前半を読む

(アジアサッカー研究所 長谷川/四方)

■お知らせ■

第3回アジアサッカーキャリアセミナーを11月25日(火)19時半〜、東京・千代田区で開催します。ゲストスピーカーにはJリーグアジア室より、山下修作氏をお招きいたします。詳しくはこちらをご覧下さい。 http://ja.ifaf.asia/news/469




<座談会ファシリテーター自己紹介>

四方 健太郎(アジアサッカー研究所/F.C. ASIA)
kenyomo私はJリーグがアジアのプロリーグの中でベストだと思っている。しかしながら現在、Jリーグをよりよりリーグにしていくために、まだまだ課題があると思う。そのうちの1つは我々のフットボールのマーケットを、シンガポールを含めた東南アジアで拡大していく必要があるということ。私は以前、2010年のワールドカップに合わせて「世界一蹴の旅」をやって、世界中にたくさんの友人ができた。それはとても良い経験で、そこで得たネットワーク・知見を還元したいと考えています。つまりJリーグおよび日本サッカーが、どのようにアジアの人と協力して、ともに発展していけるかを模索していきたいということです。日本のサッカーコミュニティは極端に閉鎖的で、なかなか海外のローカルサッカーコミュニティと交流できない。多くのファンやサッカー関係者が日本から多く訪れるシンガポールでのブラジル戦は、まさに良いチャンスだと考えており、この座談会を企画しました。


ジュン・タン(JUNPITER FUTBOL)
juntan私はシンガポールサッカーのためになるような情報を配信するために、JUNPITER FUTBOLというサイトを3年前に立ち上げました。シンガポール代表はスズキカップのディフェンディングチャンピオンで、東南アジアの中で強豪チームです。しかし、Sリーグに関しては予算や練習の環境の問題で思うように上手く進んでいません。Jリーグが先行して成功しているため、そこから学ぶことはあるのではないかと思っています。元々サッカーのプロ選手でしたが、自身のキャリアを考えて現在は別の仕事に就いています。それでも自分のシンガポールサッカーへの想いが強く、このウェブサイトを立ち上げました。日本にも何度も取材に訪れています。



斉藤 泰一郎(Global Football Academy/GFA Soriya)

taisaito私は1999年に初めての日本人プロサッカー選手としてシンガポールでプレーし、以降でアフリカのガーナやオーストラリでもサッカーをする機会に恵まれ、たくさんの国々を選手として訪れることができました。そしてサッカー選手を引退した後、その経験をいかして2009年にシンガポールで仲間達とサッカー事業会社”Samurai Pte Ltd“をスタートしました。2012年にはカンボジアにもサッカー事業会社”GFA Soriya“を設立しました。サッカーの可能性は無限大にあると思っています。サッカーボールは色んなものをつなげ、ポジティブなエネルギーを運び、多くのものを惹きつけます。その素晴らしさを少しでもたくさんの人々に届けたくて、現在はサッカースクール、サッカーイベント、スポーツマーケティング、そしてサッカーを通じた地域貢献活動などを東南アジア各国で取り組んでいます。ボールを通じた素晴らしい出会いが、サッカーと、人生を、今より素敵なものにしてくれると信じています。