• コラム

2015年1月15日 | タイ

タイサッカー2014レビュー(1):タイの躍進を陰で支えるジャパンパワー


チョンブリースタジアムに揺れる日の丸。そのワケは?


日本のサッカーファンにとってタイリーグといえば、1部に相当する「タイプレミアリーグ(以下TPL)」のことかもしれない。JリーグのチームがACLでよく対戦するからだ。TPLの下には、2部相当のナショナル(全国)リーグ・ディビジョン1(以下D1)があり、その下にはリージョナル(地域)リーグのディビジョン2(以下D2)がある。もともとタイサッカーの裾野は広く、これらのチームは規模の大小はあれ、ほとんどがプロとして運営されている。2014シーズンのTPLは20チームが総当たりで年間チャンピオンを争った。5月の軍事クーデターの影響で1週間だけお休みしたが、それ以降はまるで「政治とサッカーは別問題」と言わんばかりに、サッカー界は通常営業をしている。


タイはASEAN域内の周辺国の中でも高度経済成長期が早く、一人当たりGDPこそ5,550ドル(2014年)と先進国基準には達しないが、東南アジアでシンガポールに次ぐ都市となっている首都バンコクを中心とした活況を見ると、発展途上国と分類されるには疑問符がつく。人口構成比を見れば分かる通り、すでに高齢化社会に足を踏み入れ、人口増加率も1%を切った。35 年前に日本が通ってきた道である。中間所得層は貧困から脱却し、サッカーに金と時間を使うようになった。週末になれば、どこの空港でもアウェイの試合に駆けつけるユニフォーム姿のサポーター集団を見かけるほど。インフラ整備も進み、AFC基準をクリアするスタジアムがいくつか建てられている。TPLは今まさに、Jリーグをすぐ後ろから猛スピードで追いかけてきている存在と言えるだろう。(プレーのクオリティにせよ、チームのマネジメントにせよ、一部は既に抜かれているかもしれない。)そんなタイサッカー界の2014シーズンを、日本との関係を中心に振り返る。


バンコク・グラスFCはヨーロッパ調の箱形スタジアムを持つ


2014シーズンのTPLでは、強力な政治力と豊富な資金力を背景にビッグクラブ化するブリーラム・ユナイテッドが2年連続で優勝し、ACL2015本選の出場権を得た。ブリーラムに予算は及ばないものの、いち早く日本の育成システムを取り入れ、チームやフロントに最大8名の日本人を抱え「質」で勝負したチョンブリーFCが最終節まで激しく優勝を争い、2位でフィニッシュ。ACLのプレーオフ出場権を獲得している。チョンブリーはFAカップでも決勝に進出した。リーグ戦、カップ戦ともに優勝まであと1歩のところまでチームを引き上げた日本人に対するファンのリスペクトは絶大であった。近年の躍進を支えた櫛田 一斗(元JFL佐川印刷)のユニフォームを着た沢山のファンがスタジアムを歩き、クラブもこの1年間「さらなる高みへ」という日本語表記の宣伝コピーを使用。様々なデザインに活かしてファンとのコミュニケーションを図っていた。


代表チームの躍進も、2014シーズンの大きなトピックである。11月から12月にかけて、ベトナムとシンガポールで行われた東南アジアサッカー選手権「SUZUKI CUP 2014」では、2002年以来となる12年ぶりの優勝を果たし、国を挙げて代表チームの活躍を讃えている。「amazing tiki taka」といえばFCバルセロナのプレースタイルの代名詞であるが、タイにおいてはいまや、SUZUKI CUP決勝のマレーシアとの試合で、27本のパスを繋いでシュートまで至った代表のプレーを指す。アンダーカテゴリにおいては、9月に行われた仁川アジア大会で、リオデジャネイロオリンピック出場を目指すU-21代表で臨み、ベスト4へと進出。準決勝においてホスト国であるU-23韓国代表に敗れたものの、こちらもタイの躍進を証明するには充分だった。9月に自国で行われたU-16アジア選手権(兼FIFA U-17ワールドカップ予選)では、予選リーグで敗退したが、翌10月にミャンマーで行われたU-19アジア選手権(兼FIFA U-20ワールドカップ予選)では、決勝トーナメント進出を果たした。代表チームの強化にも日本人が一役買っており、仁川アジア大会に向けた壮行試合として、7月にタイリーグ日本人選抜との試合も行われた。女子は5月にベトナムで行われた女子アジアカップ(兼FIFA 女子ワールドカップ予選)で5位に入り、男子に先駆けて初のワールドカップ出場権を獲得したが、直前のトレーニングキャンプを静岡で実施している。

(アジアサッカー研究所/長谷川)

>>タイサッカー2014レビュー(2/3)へ続く

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