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2016年11月15日 | シンガポール

アルビレックス新潟シンガポール、国内主要タイトルを独占。「純日本人チーム」が異国の地で掴んだ栄光への道のり

シンガポールのプロサッカーリーグ「Sリーグ」に参戦しているアルビレックス新潟シンガポール(以下「アルビS」)が、今季の国内主要タイトルすべてで優勝する快挙を達成した。アルビSが獲得したのは、Sリーグ、シンガポールカップ、リーグカップ、コミュニティシールドの四冠。国内の主要タイトルを1つのクラブが独占するのは、1996年にSリーグが開幕して以降シンガポールでは初となる。


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アルビSは所属選手のすべてが日本人で構成される「純日本人チーム」。外国人チームを加えることで競技レベルの向上を目指したSリーグの呼びかけに応じて、2004年から同リーグに参戦している。日本国外のプロリーグに日本人選手だけで構成されたチームが参加しているのは、世界中を探してもアルビSだけだ。

設立当初は親クラブであるJリーグ・アルビレックス新潟の下部組織として、トップチームの試合に出られない若手選手に経験を積ませる場として期待された。しかし新潟へ復帰して活躍する選手を輩出することはできず、チーム自体の成績も毎年リーグ中位に低迷していた。新潟サイドからは撤退を検討する話が上がったこともあるという。

クラブが変わるきっかけとなったのが、2007年末に代表に就任した是永大輔氏による経営改革だ。それまでアルビSは毎年赤字を計上して親クラブの新潟から補てんを受けていたが、新規スポンサー獲得やコスト削減などの経営努力によって独立採算に切り替えた。さらにミニカジノを併設したクラブハウスを開設し、その売上金をクラブ運営に回すといった施策により、クラブの売上は是永氏が就任する以前の約8倍まで増加した。

運営資金が豊富になったことで、獲得する選手の質も向上した。今季のチームには、新潟や湘南、松本で活躍したベテランGK野澤洋輔や、元長崎のDF代田敦資、SリーグクラブでもプレーしたMF乾達朗といった経験・実力をもった選手が所属しており、チームの核となっている。今季の公式戦で20ゴールをあげてリーグMVPに輝いたFW河田篤秀(阪南大出身)は、J2クラブからの誘いを断ってシンガポール行きを決めており、アルビSに所属する選手個々の実力はここ数年で確実にレベルアップしている。

選手が入団する際に決め手のひとつとなっているのが、海外への移籍をクラブが積極的に後押ししている点だ。これまでにアルビSから約50名の選手がアジアや欧州のリーグに移籍しており、海外への挑戦を志す選手たちにとって第一歩を踏み出す場として機能している。

また、7年ぶりにチームに復帰した鳴尾直軌監督の指導も今季の躍進に大きく貢献した。所属選手の適性を生かすために開幕当初から3バックのシステムを採用。両ウイングバックがゴール前まで走りこむ積極的な攻撃で得点を重ねるとともに、守備時には5バックで自陣にカギをかける戦術は、4バックが主流となっているSリーグで大きな効力を発揮した。2009年にアルビSを率いた際は7位(11チーム中)に終わったが、その後J3・グルージャ盛岡で監督を務めたことで指導者としての経験値を高め、その成果がシンガポールで大きく花開いた形だ。

国内四冠というシンガポールでは前人未到の偉業をアルビSだが、その前途には大きな課題が残っている。Sリーグの優勝チームには、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のプレーオフに参加する権利が与えられるが、外国人チームであるアルビSにはAFCの規定により同大会への参加資格が認められていない。日本人選手が海外へ挑戦するための窓口となっているアルビSが、クラブとしてはアジアの舞台に上がることができないという皮肉な事態になっているのだ。

この状況を打開するためのキーワードが、クラブの「ローカル化」だ。マネジメントはこれまでどおり日本人が担いながらも、シンガポール人選手を主体としたチームを作り、日本人選手を外国籍選手枠で獲得する形であれば、アジアの舞台を目指すことも可能となる。

是永氏はシンガポールの地元紙の取材に対して、「私の目標はアルビレックスをローカルクラブすること。シンガポール人選手をチームに加えて、いずれはシンガポール代表に入る選手を育てたい」と話すなど、クラブのローカル化に積極的な姿勢を示している。

ローカル化に向けてはSリーグの規定を変更するなど多くの課題があるが、Sリーグを完全制覇したことで、クラブとしても次のステップを目指す必要が求められている。シンガポールを制したアルビSが、ACLの舞台でJクラブと対戦する――。そんな夢が現実のものとなる日がやってくるかもしれない。


(アジアサッカー研究所/安藤)

※ 本稿は「ハーバービジネスオンライン」にも掲載しています