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2017年2月17日 | タイ

2100億円の大型放映権契約で「アジア戦略」も加速!Jリーグ主催の大会がタイで開催

1月24日と26日の両日、タイ・バンコクで「2017Jリーグ アジアチャレンジinタイ インターリーグカップ」が開催された。同大会はJリーグの「アジア戦略」の一環として行われたもので、Jリーグから鹿島アントラーズと横浜F・マリノスが参戦してタイリーグの2クラブと対戦。Jリーグ勢対タイリーグ勢というリーグ対抗戦形式でタイトルを争った。

Jリーグは2012年からアジアのレベルアップとマーケットの拡大を目指し、「アジア戦略」を本格的にスタート。東南アジアを中心とするアジア各国とのリーグ間、クラブ間での提携をはじめ、育成年代を含めた選手や指導者の交流、東南アジア出身Jリーガーの排出などさまざまな角度から戦略を推し進めてきた。

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そして今回、Jリーグとタイリーグが主催してタイで大会を開催するという新たな試みが行われた。大会の実現に向けて尽力してきたJリーグ国際部の大矢丈之氏は、同大会の目的は「Jリーグの価値を高めること」にあると語る。

「この4年間、『アジア戦略』としてさまざまなことをしてきたなかで、今年は念願のタイ人Jリーガーも誕生しました。ただ、選手だけでは限界があります。Jリーグの価値自体を高めるためには、商品である試合をもっと出していかなければいけません。アジアでトップと言われるJリーグの試合を生で見てもらいたい。特に子どもたちに見てもらい、次の世代の選手たちがより現実的にJリーグを目標とするような環境を作れればと」

Jリーグは今季、英国のパフォーム社が提供するライブストリーミングサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」との間で10年間、約2100億円という大型の放映権契約を締結した。年間でもこれまでの何倍にも上る放映権収入を得たことで、新たに大きく戦略を構築することを試みている。「アジアチャレンジinタイ インターリーグカップ」もその枠組みの中で企画された。

大会の開催へ向け、Jリーグは全てのクラブに案内を送ると10クラブほどが参加の意思を表明。そのなかから多角的に勘案された結果、「実績があり、この機会をクラブ経営にも活用できるマインドを持っているクラブ」(大矢氏)として鹿島と横浜の2チームの出場が決まった。一方のタイリーグからも昨シーズン2位のバンコク・ユナイテッドと、近年は上位争いの常連となっている新興勢力のスパンブリーFCが参戦。両リーグの上位クラブ同士による対決が実現した。

大会は同リーグ同士の対戦は行わず、リーグ間の勝敗を争う「リーグ対抗戦」という独特の形式で行われた。結果は3勝1敗でJリーグの勝利となったが、バンコク・ユナイテッドが鹿島を4-3と下したのをはじめタイリーグ勢も健闘。Jリーグのトップレベル2クラブを相手に、急成長を遂げるタイリーグの勢いの一端を感じさせた。

試合の模様は日本では今季からJリーグの放送権を得た「ダ・ゾーン」、タイでは大会に出場したバンコク・ユナイテッドのオーナー企業でもある「トゥルー」によって全試合生中継。試合の行われない中日には、両チームの主力選手をスタジオに呼んでのインタビュー番組も放送された。

トゥルーではインターネット上での試合中継も行われ、多い試合では30万人ほどが視聴。試合は平日のダブルヘッダーでの開催となったためスタジアムを訪れた観客が少なかったのは課題として残されたが、インターネットを含めた試合中継の効果を含めれば、「タイの人たちにJリーグの試合を見てもらう」という目的はある程度達成したといえる。

ともに国内リーグ開幕を控えた両国のチームにとっても、大会への参加はそれぞれにメリットがある。タイのクラブからは「タイよりもレベルの高い日本のチームとやれることは勉強になる」(スパンブリーFC、セルジオ・ファラス監督)、Jリーグ側からは「この時期に大会があることで、いつもより早い準備ができたのはポジティブなこと。海外に来てともに生活することで選手の団結力も向上した」(横浜、エリク・モンバエルツ監督)など、双方からポジティブな声が聞かれた。

会場の設営などを含めた大会運営は、Jリーグからやってきたスタッフを中心に行われた。そのため、スタジアムにはどこかJリーグの試合を感じさせるものがあり、東南アジアのローカル大会とはひと味違う雰囲気が醸し出されていた。Jリーグが培ってきたノウハウを無償でアジア各国に提供するというのも、「アジア戦略」の趣旨の一つ。その意味で、運営面のノウハウを実践で共有できることもこの大会の意義といえるだろう。

「短期で何か成果を求めているというよりは、こういう大会を根付かせて中長期でJリーグを認知させていきたい。今回はまず、大会が実現できたことが大きいと思っています。今回見えた課題を修正して、来年以降も継続していければと。まずは最重点国であるタイでの開催となりましたが、『アジアチャレンジ』としているように今後は他の国も含めた展開も検討しています」(大矢氏)

タイをはじめ東南アジアの国々では日本代表のユニフォームを来た人の姿をよく見かけるが、Jリーグクラブのユニフォームとなるとほとんど目にすることがない。東南アジアにおける日本サッカーのブランド力は非常に高いものがあるにも関わらず、Jリーグへの注目度はそれに比例していないのが現状だ。こういった大会を地道に続けていくことで近い将来、Jリーグのユニフォームも東南アジアの日常の景色のなかに見られる日が来るだろう。


※ 本稿は「ハーバービジネスオンライン」にも掲載しています


本多 辰成(ほんだ たつなり)
1979年、静岡県浜松市出身。出版社勤務後、日本語教師としてタイへ渡る。その後、タイをベースにフリーランスライターとして活動。サッカーをはじめとした東南アジアのスポーツを中心に取材、執筆を行っている。東南アジア情報サイトやサッカーメディアなどにタイを中心とした東南アジア関連の記事を寄稿している。