• コラム

2017年1月27日 | アジア | スリランカ

スリランカサッカー、世界最弱からの挑戦

DSCN3391

2015年5月に行われたロシアワールドカップ予選1次ラウンドで、当時FIFAランキング最下位のブータンに歴史的勝利を許し、スリランカ代表は早々にワールドカップへの道を閉ざされた。試合後、セルビア人監督を解任し、代表選手たちも若い選手たちへと一新された。しかし、2015年12月インドで行われた南アジア選手権でネパール相手に勝利を挙げたものの、今日まで8戦1分け7敗と下降の一途をたどっている。2016年11月にマレーシアで行われたSolidarity Cupではラオス(当時FIFAランキング175位)とモンゴル(同202位)に苦杯を喫し、既に予選突破を決めてメンバーを落としてきたマカオ(同196位)に引き分けに持ち込むのが精一杯であった。現在FIFAランキング195位と過去最低に位置している。

そんな代表選手達がプレーするのがスリランカのトップリーグの「チャンピオンズリーグ」である。今年は「アジアの渡り鳥」の異名を持つ伊藤壇選手がコロンボFCの一員としてプレーした。このリーグは18のチームを9チームずつの2つのグループに分け、各グループ内で総当たり戦を行い、それぞれのグループ上位4チームの計8チームが決勝ラウンドであるスーパーエイトと呼ばれるプレーオフに進出する。この決勝ラウンドでは8チームが総当たりのリーグ戦でチャンピオンチームを決める。

Army、NavyやAirforceといった軍関連のチームがある一方、先に挙げたコロンボFCのようにExpolanka という国内大手の物流会社がスポンサーとなっているチームもある。(このExpolanka社には日本の物流大手でもある佐川急便の資本が入っている)多くのチームにはナイジェリア人やカメルーン人といったアフリカ人が所属しており、各チームの中心となるポジションにはアフリカ人が陣取り、リーグは彼らに依存しきっているとも言える。このチャンピオンズリーグの下にはプレミアリーグDivision1、Division2といった2部3部に相当するリーグがある。これらのチームには在留日本人も数人所属している。
いくつかのチームは育成年代のアカデミーを有しており、無償でグラスルーツ・ユース年代の選手の練習を行っている。昨年には富裕層を対象としたアカデミーが設立され、在留外国人や裕福なスリランカ人の子どもが所属している。

しかし、アカデミーを有しているのはコロンボのような大都市にあるチームの、それもほんの僅かである。グラスルーツ・育成年代の大会はSchool Football Associationという教育省管轄の組織によって行われる(スリランカサッカー協会はスポーツ省所属)。しかし、コロンボ以外では日本でいうところのインターハイや全国高校サッカー選手権のような大会しか定期的には存在しない。ゆえに多くの選手が学校のチームに所属している。しかし、学校のチームは大会の数週間前から練習を開始するために、大会がない期間には練習が止まってしまう。このような時期には子供たちは自分の村の大人のチームに混ざってプレーをする。この育成年代へのアプローチの悪さが現代表の下降を物語っている。

この事態を打開するために、2017年1月よりスリランカサッカー協会によりサッカーアカデミーが開校されることになった。初めに北部州のジャフナにて開校される。その後に、西部州コロンボ・ウバ州バドゥッラ・サバラガムワ州ハットン・南部州マータラの計5校が開校される予定である。このアカデミーではグラスルーツの子どもたちからU-18の選手までが、サッカー協会により任命された常勤コーチによる指導を受けることになる。


※ 本稿は「ハーバービジネスオンライン」にも掲載しています