• コラム

2017年12月31日 | 中国

ターニングポイントとなった2017年の中国サッカーまとめ


■ 名将マルチェロ・リッピを招聘した中国代表

ワールドカップ・ロシア大会出場を目指す中国代表は、イタリアの名将マルチェロ・リッピを三顧の礼で迎い入れ、苦戦を続けるアジア最終予選を戦っていた。

リッピ就任までの中国代表は、イラン、韓国、ウズベキスタンなど強豪ひしめくグループAで、4戦未勝利の高洪波監督を更迭。予選突破には極めて厳しい状況を迎えていた。

リッピ体制での初陣は、カタールを相手にスコアレスドローを演じたが、年明け最初の韓国戦で、かつては恐韓症という表現を用いて、韓国を苦手にしていたはずの中国代表が、早くも奇跡を起こすことになる。

2017年3月23日、中国湖南省の省都長沙で行なわれた韓国戦で、前半34分にFW于大宝(北京国安)が突き刺した虎の子の1点を守り切り、ワールドカップ・アジア予選においての歴史的な勝利を飾ったのだ。

韓国の猛攻をしのぎ切り、試合終了と同時に会場の熱気は最高潮に達する。まるで本大会への出場を決めたかの如く観衆は狂喜乱舞、この試合でゲームキャプテンを務めたDF馮瀟霆(広州恒大)は、試合後のインタビューで感涙をこぼしている。

その後の中国代表は、イランとのアウェイ戦を落とすものの、その他では確実に勝ち点を積み重ね、一時は予選敗退が確実視されていた状況から脱することに成功。最終予選の最終節までプレーオフ進出の可能性を繋いで見せたリッピの手腕は評価に値する。

マルチェロ・リッピの中国代表監督としての契約は、2019年のアジアカップまで。窮地の中国代表を救ったリッピの存在は、すでに中国内では神格の域に達している。


■ スコラーリ監督率いる広州恒大が前人未到のリーグ7連覇

2017年の中国スーパーリーグは、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督率いる広州恒大が逃げ切りタイトルを獲得。広州恒大は前人未到のリーグ7連覇を達成した。

前回大会王者として臨んだAFCチャンピオンズリーグでは、中国勢同士の直接対決となった準々決勝(東地区の準決勝)で、上海上港に競り負けて敗退したものの、今季半ばごろから勇退の噂が囁かれていたスコラーリ監督の退任の花道を飾った。


■ ビラス・ボアス監督率いる上海上港の大躍進

アンドレ・ビラス・ボアスを指揮官に招聘し、広州恒大の対抗馬と目された上海の新興勢力上海上港は、クラブの生え抜き選手と大型補強したフッキやオスカルなど外国人選手の融合に成功、2017年の中国サッカー界の台風の目となった。

アジア随一とも言える破壊力抜群の攻撃陣を擁し、国内リーグとカップ戦で勝利を重ね、2度目の出場となったAFCチャンピオンズリーグでも決勝トーナメントに進出。宿敵広州恒大を度々破るなど、大躍進を果たすことに成功した。

しかし、中国のサッカー界に身を転じたばかりのビラス・ボアス自身が、リーグ運営や審判団への不満を包み隠さず表明し続けたことで、中国サッカー協会から再三に渡りベンチ入り禁止の措置を施される事態に遭遇する。

結果的に、国内リーグでは広州恒大を猛追するも2位、国内カップ戦も決勝で宿命のライバル上海申花に敗れ準優勝となり、期待されたタイトル獲得はならなかった。AFCチャンピオンズリーグでも準決勝(東地区の決勝)で浦和レッズに競り負けて、大会から姿を消した。

尚、上海上港とは2年の任期で上海入りしたビラス・ボアス監督だったが、今季が終了した時点で契約を1年残して退団している。

野心に溢れる若い指導者であり、王者に君臨する広州恒大の対抗馬として、より成熟するであろう2年目の指揮に期待が寄せられていたが、中国サッカー界への不信感を露わに、すでに上海を後にしている。


■ 2017年は中国サッカー改革のターニングポイント

中国スーパーリーグは、習近平国家主席自らが主導するサッカー改革のうねりの中で、矢継ぎ早に実施と是正を繰り返している状況にある。

特に2017年はリーグ開幕直前の時期に、外国人選手の出場枠の削減と、23歳以下選手の出場義務が課せられたことに始まり、さらにクラブライセンスに関わる新しい規則が発表されるなど、各クラブはトップダウンによる改革への対応に追われた1年となった。

外国人選手枠の削減と若手選手の登用の方針によって、アジア人選手の需要が失われたことで、多くの韓国人とオーストラリア人選手が中国から去って行った。

また、世界的な指導者が中国からのオファーを受諾する時代を迎えたことで、比較的安価に且つ、ある程度結果を残せる指導者として需要のあった韓国人指導者が、今季終了までにすべて姿を消した。

2016年の年末の頃までは、直言するとカルロス・テベスの上海申花への加入発表の頃までは、異常なまでに勃興していた中国スーパーリーグだったが、この1年で正常な状態を取り戻しつつあると言える。

中国のサッカー改革は、2017年がひとつのターニングポイントだったと、いずれ語られることになるのだろう。



池田 宣雄(いけだ のぶお)
42歳の時に香港で執筆活動を始めた遅咲きのフットボールライター。
アジアコスワース代表。香港サッカー協会会員。アジアサッカー研究所中華圏担当。